連載

2019年6月25日号

バイナス、人の目と手、ビジョンとセンサで代替

 シュークリームやイチゴのように柔らかく、個体ごとに大きさが異なる食品を触覚センサ付きハンドでつぶれないようにつかんで整列させる。もしくは、小さな金属コネクタを樹脂部品に正確にはめ込み電磁スイッチを組み立てる――。こうした人の繊細な感覚を必要とする作業は今まで、最もロボット化が困難な分野として知られてきた。
 バイナスは、この分野の自動化に果敢に挑戦し続け、食品・医薬品から農業、自動車・電気部品、金融関連まであらゆる産業に活躍の場を広げてきたSIerだ。創業から数えて36年。渡辺亙社長は「本当に実現できるのか?と思ってしまうような、業界初挑戦となる自動化の依頼が多かった」と振り返る。
 人の目と手に代わるビジョンカメラや力覚センサなどのノウハウに長け、特に2Dカメラでワークのエッジを検出する技術は群を抜いている。「安価なLED照明を使っても、位置誤差がゼロ~数㍉の範囲でエッジを検出できる」と同社営業部の下間篤部長。「光の当て方や色相など、豊富な経験値が勘所を養った」と胸を張る。
 位置検出速度が素早く、ロボットや周辺機器、搬送装置などとの連携もスムーズだ。量産のタクトタイムが重視される自動車・電子機器など製造業向けの分野で数多くの開発実績を積み、食品など他分野にもノウハウを展開してきた。例えばラッキョウの全長を2㍉違いで判別して的確に根と芽を切断できるロボットシステムでは、同システム1台分で12人分(24時間稼働時)の作業を代替することに成功し、高齢化に悩む農業分野の省人化に大きく貢献した。今後は自社開発ハンドの外販やAGVの活用提案も進めていく構えだ。

■将来のSIer育成へ
 「ロボットの不得意な部分を見極めるのも、SIerの大事なノウハウだ」と渡辺社長は言う。例えば精密なネジ締めでは装置をハンドに持たせても圧力が足りず正確に締め付けられないため、ロボットの作業はワーク搬送に絞るほうが良いそうだ。
 そうした見極めが的確にできるのは、同社がロボットのみならず、メカ・電気設計からソフト設計に至るまで、自動化に関わる総合技術をバランスよく備えるからだろう。そうした総合的なスキルを同業者が身に着けられる場として、また、ユーザーのロボット人材育成の場として、18年4月にはロボット人材育成のため「BYNAS教育センター」を開校した。
 渡辺社長はFA・ロボットシステムインテグレータ協会の副会長を務めており、その目線は将来のSIer産業発展を見据えている。
 「ロボットSIerの認知度は、30年前のPLCと似ています。PLCは、技能検定創設により工業高校や高専の科目になって初めて普及が進みましたが、SIerも同じでは。ロボット制御(ティーチングやプログラミング)の検定制度を早期に立ち上げ、いずれは高校生がなりたい職業の1つとして『ロボットSIer』の名が上位にランクインしてほしいですね。やってみると分かるんですが、この仕事は実に創造的。日本のロボット化を支える魅力ある仕事だということを広く知ってもらいたいと思います」

(写真=国際ロボット展2017に出展した触覚センサロボットハンドによるデモ。シリコンゴムのハンド内部のカメラを通じて圧力を算出し、つかむ力を自動調整する)