コラム

2019年7月10日号

 覚えておきなさい。これからの日本の製造業は素材と部品だよ―。かつて、そう熱く語ったのは、製造業を評論し、多くの著書や講演会を通じモノづくりにエールを送り続けた故・唐津一氏(東海大学名誉教授)だった▼弊社がインタビューしたのは20年近く前。東京銀座にある大手広告代理店のビルの一室に書斎を構えた氏は当時確か80歳近く。ニコニコと応対し好々爺ふうだったが、核心部で意見を求めると、気概を込めた口調で自説を展開し、止まない▼そのインパクトが強かったぶん「これからは部品だよ」の発言は、ある種の予言のように記憶にこびりついた▼ただモノづくりの付加価値は、その当時から最上流の企画開発と、最下流の流通・物流にシフトし、中間の部品加工や組立は採算的に厳しさを増し出していた。ファブレスのアップル社がiPod、iPhone 、iPadと進撃を開始したのもこの頃だ▼氏の見立ては見事に当たり、今年のものづくり白書も、部素材に強みを持つのが我が国製造業の今の特徴と、再三述べているのだが、どれだけ付加価値をつけられるのか課題になる▼そんななか、半導体材料の対韓輸出規制が急遽発動した。世間は冷え込む日韓関係がさらに悪化しそうと危ぶむが、専門紙記者としては少し違った見方をしてしまう▼日本の高度な素材、材料、部品の価値が、これを契機に再評価されないかなと。取引でイニシアチブを取れるようになればいいなと。そうできる可能性もなくはないはずだ。

(2019年7月10日号掲載)