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マテハンで「稼ぐ」

EC急伸長、「運べない危機」到来か

―今号(8月25日号)の紙面特集より、ここではマテハンで「稼ぐ」を掲載―。
 年々深刻さを増す物流現場の人手不足。それを受け、足りない人手をマテハン機器の設備投資でカバーする動きが業種を問わず必然となってきた。ただ、一言に「投資」といっても、適切な投資で効果をあげる企業がある一方、思うような効果を得られない事例も少なくない。危機的状況を成長機会と捉え、企業は物流を「弱点」から「強み」に変えるべく前向きな投資を行うべきではないか。本特集では物流の置かれた状況から設備の市場・技術動向、物流改善事例まで、有識者の見解も交えながら、マテハンで「稼ぐ」ためのヒントを追った。
 「物流クライシス」という言葉をたびたび耳にするようになってきた。物量が輸送能力を上回り、モノを運びたくとも運べない――物流業界が直面するパンク寸前とも言われる危機的状況を、端的に表現した言葉だ。
 EC市場の目覚ましい発展により、宅配貨物数は増加を続けている。国土交通省の行った「2017年度宅配取扱実績」調査によると、2017年度の宅配便取扱個数は42億5100万個。2006年度の取扱い個数が29億3900万個だったことを鑑みると、およそ10年間で1.5倍近く物量が増えている計算となる。特に2015年からの伸び幅は大きく、2年連続で取り扱い個数が年2億個以上増加するなど、荷量の伸長に歯止めがかからない。
 経済産業省が2019年に発表した調査によると、2018年度のEC市場規模(BtoC)は17兆9845億円と、前年度(16兆5054億円)と比べおよそ9%の伸びを記録している。2010年から右肩上がりの増加を続けていることからも、荷量の増大傾向は今後も続きそうだ。

ドライバー不足、28年に28万人に

 一方で、増えた荷の運び手であるドライバーの数は伸び悩んでいる。
 (公社)全日本トラック協会が2019年8月に発表した「トラック運送業界の景況感(速報)」によると、2019年4月~6月の労働力の不足感について、「不足」「やや不足」と答えた企業の割合は全体の70.4%。「過剰」「やや過剰」と答えた企業の割合が2.3%であることを踏まえると、人材不足に疑いはなさそうだ。
 運転手不足の傾向は改善されるどころか、さらに悪化する見込みさえある。(公社)鉄道貨物協会が2019年5月に発表したトラックドライバーの需給調査(表)によると、2017年度における必要ドライバー数109.1万人(推計)に対し供給量は98.7万人とすでに10万人以上の運転手が足りていない。少子高齢化や業界へのマイナスイメージによる志望者の減少もあり、需給の乖離は年を追うごとに拡大する見通しで、同協会は2028年度のドライバー不足人数はおよそ28万人にのぼると推計する。運転手不足へ期待がかかる自動運転技術も、実用化に向けてはまだ時間がかかるとの見方が強いようだ。
 一方で、ドライバー不足の影に隠れ見えづらいが、同じく物流の担い手である倉庫業への従事者も不足が続いているという。大規模物流センターの建設が相次ぐ中、労働集約型産業となりつつある倉庫業だが、求人を出せども人が集まらず、外国人労働者の採用を増やすなど企業は対策に奔走する。なかには国籍を問わず人材を掻き集めた結果、複数の言語が飛び交うなど「多国籍軍化」したセンターもあるというから、その深刻度は推して知るべしだろう。
 EC市場の伸びにより荷量は増えるが、ドライバーも荷役作業者も足りない。まさに「物流クライシス」だ。従来の物流のあり方を、根本から見直す時がきているということかもしれない。

物流費高騰、企業利益を圧迫も

 こうした物流業界における危機的状況について、他業界に身を置く企業が「対岸の火事」と高をくくるのは少々危険だろう。物流費の高騰が荷主企業の経営に打撃を与えるなど製造業等にも影響は出ており(6面に有識者見解)、人手不足を補うマテハン機器への期待は年々膨らんでいる。なかでも省人化に直結する自動倉庫などは人気を集めているようだ(下に動向記事)。物流業以外でも人手不足が深刻化するなか、荷主側も含め物流効率化が求められる局面がきているといえる。
 ただし一言に投資といっても、そこに臨むスタンスによっては明暗が分かれるかもしれない。必要に迫られ場当たり的な投資を行うのか、危機を好機と捉え戦略的かつ包括的な投資で利益を押し上げる体制を構築するのか。構え方ひとつ取っても結果は違ってきそうだ。
 導入の前段階での十分な検討も重要な要素だろう。どの課題の優先度が高いのか、解決に向けどのようなソリューションが自社にとって真に適するか、効果を最大化するため仕様・レイアウトをどうすべきか、投資回収はどの程度の期間を要するか…考えるべきことは多いはずだ。
 物流をコストのかさむ「弱み」から「強み」へ変換できれば、それは目先にとどまらない長期的な企業利益の確保につながる。人手不足の波が押し寄せるなか、マテハンで「稼ぐ」体制を構築できるか。企業は判断を迫られている。