識者の目

国内・海外のものづくりIoT/M2M動向

 海外のIoT/M2Mはどのような取り組みがあり、どこまで進んでいるのか。大いに気になるところである。何故ならば日本の製造業は海外市場、グローバル生産なくして成り立たないからである。筆者が取り組んできたIoT/M2Mの海外展開の経験からその実情を紹介する。

■ドイツのIndustry4.0との出会い
 ドイツではリーマンショック後、ネットワークによるデジタル生産革命の取組みが国家プロジェクトとしてスタートし、第四次生産革命を目指す国家戦略「Industry4.0」の発信につながった。筆者は15年11月、おそらく日本で最初のIoTセミナーの1つであろう「インダストリー4.0・ドイツからの報告と日独協力の可能性」(バイエルン州駐日代表部)の講演依頼を受けた。
 ドイツは、国家を挙げて「モノのインターネット」の覇権を目指し、通信規格やプラットフォームの開発に余念がない。バイエルン州駐日代表部のゲルティンガー代表は、日本とドイツの違いについて「日本は部分最適の強みがありますが、クラスター構想をはじめ、全体を考えて構造を考えるというのはドイツのほうが強いように思います。自国のみならず世界にまでスコープを広げ、製品やシステムの強みを考え、どう世界に広げるかの戦略を練る点が、ドイツの特徴でもある」と解説していた。IoTで国、人種、企業、組織の間の「壁を壊す」という概念は欧米流の合理的な考え方だろう。日本は独自性を貫けば良いだろうが、欧・米・中の通信規格やIATFなどの品質規格などの覇権的取り組みには注意が必要である。 

■中国製造2025の取組み
 18年8月、KMCは重慶市で開催された中国初のIoT展示会「中国製造2025 Smart China Expo2018」に日本メーカーとして唯一出展した。メディアだけでも2000人、国内外から数万人もの来場者が集まるのみならず、政府要人も参加する国家的な一大イベントだ。中国のIoTに対するニーズと製造改革の期待を肌で感じた。中国ではSAPに相当する「金蝶」などの自国ERPソフトやアリババなどによるクラウドサービス、QRを使用したキャッシュレス、5Gなどの高速通信技術が日本以上に進んでいる。安い人件費で成長した中国もここ数年相当なスピードでIT化・ロボット導入を進めているのだろう。KMCでは既に日系企業と中国サプライヤーに「M-Karte」「Σ軍師」を販売して現場目線のIoTを提案しているが、中国の一般経営層のニーズは「品質」より、「人件費高騰対策」が最重要課題とみた。コスト優先から離れ、今後は日本のような品質・信頼性重視に舵を切る必要があると考える。

■東南アジア諸国のIndustry4.0の取り組み
 本年、6月10日マレーシアのマラッカにてマハティール首相、ザハリ大臣も参加した実質のIndustry4.0のキックオフ的なイベント「SIC(Smart Indutrial Center)のGrand Opening Ceremony」が盛大に開催された。SICはコニカミノルタの最新鋭工場とサプライヤー11社が連動する実践の場であり、KMCがIoT/M2Mのコンサルを担当した。SICはマレーシアのデジタル国家政策に基づく、マレーシア初のスマート工業団地として注目を集め、イベントはASEAN各国のメディアでも多数報道された。マレーシアはアジアの「へそ(中心)」的位置にあることから、生産、流通の拠点として日系メーカーも数多く進出している。だが人件費高騰を受け、現体制ではもはや利益が出ないところまで追い込まれてきた。そこで、一気にデジタル化、IoT/M2Mへの転換を図ろうとしているのだ。
 アジア諸国は日本のものづくりを手本として育ってきた。IoT・デジタル革新についても日本の動向に対して非常に関心が高く、日本企業のIoT/M2Mの成否は、アジア全体のサプライチェーン改革を左右する取り組みとなると筆者はみている。

㈱KMC 代表取締役社長 佐藤 声喜

秋田県出身、1956年生まれ。芝浦工業大学機械工学科博士課程修了。三井金属鉱業のデトロイトオフィスで技術開発者として活躍し、同社社長表彰、HONDA研究所長表彰、特許/実用新案240件以上出願などの実績を積む。その後、1990年にインクスを設立し、常務取締役として技術コンサルや金型・試作・設計派遣など事業全般を統括した。2010年にKMCを創業し、代表取締役社長。製造業の技術コンサルや生産プロセス改革に関わるソフト開発を手掛ける。川崎市リサーチセンターフェロー、素形材センター理事、光造形産業協会理事、日本金型工業会技術委員などを歴任。日本酒のソムリエ「唎酒師(ききざけし)」の資格も取得ずみ。