連載

2019年9月10日号

静岡県浜松市のロボットSIer、異業種協業でバリ取り自動化も

社名・住所等記入

 ロボットSIer事業を営む企業は数あれど、これほどの密集地はそうないだろう。
 7月に行われた「ビジネスマッチングフェア in Hamamatsu」(主催:浜松いわた信用金庫)の取材時にそんな思いを抱いた。東海工業地域の一角をなす静岡県浜松市は、スズキやヤマハなど名だたる企業が生産拠点を有する工場設備技術の集積地であり、同時にロボットSⅠerの集まる地でもある。
 「自動化提案を行うなかで、気付けばSⅠerになっていたというのが正直なところでしょうか。30年以上前から、ラインの自動化にはロボットが付き物でしたから」。そう語るのは、日本設計工業の名倉慎太郎社長。マテハン機器を用いたラインビルダーとして知られる同社だが、一方でロボット市場の黎明期から実績を重ねてきたSⅠerとしての顔も持つ。生産ラインのロボットニーズは旺盛なようで、「最近はロボットが入り口となって商談がはじまるケースも多い」という。
 同社の顧客は自動車や三品業界など多岐にわたるが、なかでも医療現場の自動化需要は根強いようだ。ビジネスマッチングフェアではマテハン機器と協働ロボットを組み合わせた血液検体の自動搬送システムを披露。省スペースながら、検体入り試験管のピッキングや搬送、ソーティングを自動化するデモを見せた。
 一方、新興SⅠerとして勢いがあるのがウチゲンだ。工業用塗料の販売および塗装工事を主力としてきた同社がSⅠer事業に参入したのは2017年のこと。発足から3年足らずではあるものの、自社開発の画像処理技術に強みを持ち、食品の検査工程など幅広い分野で実績を積んでいる。
 ロボット事業の構成人数も、19年からは発足当初の3倍以上となる12人体制へ拡大。18年にはR&Dセンターも新設し、「今後は介護施設等に向けたサービスロボット事業にも取組みたい」と前向きに話す。

■全国巡る「出前講習」
 一方で、同市ではロボットを軸にした企業連携も生まれてきた。
 アルミダイカスト部品のバリ取りを請負う藤本工業と、産業ロボットの導入コンサルティングを行うアラキエンジニアリング、ロボットSⅠer事業を手がける東洋鐵工所。この3社の協業で誕生したのが、「バリ取りロボットシステム」だ。東洋鐵工所がシステムを設計し、アラキエンジニアリングが技術支援を担当。そうしてできたバリ取りロボットシステムに、前述の両社による教育を受けた藤本工業の作業者が最適な工具角度や経路をティーチングし、職人作業のようななめらかな動きを実現した。試作機は実際に藤本工業の作業者が試用。浮上した改善事項をフィードバックすることで改良を重ね、すでに量産体制に入っているという。
 「ロボットシステムを複雑化するとコストが膨らみ、導入ハードルが上がりますが、簡単なシステムにすれば費用を抑えることが可能です」(アラキエンジニアリング・荒木弥社長)。
 荒木社長はさらに前を見据える。
 「大企業は人材やノウハウがあり、難易度の高いロボットシステムを組めますが、中小企業ではそうはいきません。はじめから難しいことに挑むのではなく、まずは勉強を通じたロボットの得手・不得手の把握が重要です」
 そのための施策として荒木社長が実施しているのが、「出前ロボット講習」だ。社長自ら教育用ロボットを車に積み込んで全国を巡り、積み木を用いたティーチング教育を行っているという。
 「固くなりがちなロボット教育ですが、どうせやるならば楽しく学ぶべきでしょう。思い通りにロボットを動かせる楽しさを感じ、ロボット導入の第一歩にしてもらいたいですね」