PICK UP 今号の企画

モノづくり特集/競争力の新機軸

まだ続く下り坂? 次の山頂に備えるべし

―今号(9月10日号)の紙面特集より、ここではモノづくり特集/競争力の新機軸を掲載―。
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DMG森精機が7月9日、伊賀事業所(三重県伊賀市)内に開所した「グローバルパーツセンタ」(床面積1万2810平方m)。パーツ10万点を備蓄し、24時間以内のパーツ発送率95%をさらに高めていくという

 ハードよりもソフトの重要性が高まってきたモノづくりの世界はここ数年、それが一段と加速している印象だ。IoT(ネットワークを介してモノが相互に情報交換する仕組み)やAI(人工知能)、センサーが生産設備にどんどん入り込み、ユーザー側でもこれらを積極活用して生産性を飛躍的に向上しようとしている。9月は2号続けてモノづくりに焦点を当てる。第一弾となる今号は機械加工を中心に新技術や市場の動向を追うとともに、メーカートップ/幹部8人のインタビューを掲載する。
 2017年春から高水準にあった日本の工作機械受注は、18年3月をピーク(1829億円)に下り坂にある。直近の今年7月分は1013億円とかろうじて大台を維持したが(8月22日、日本工作機械工業会発表)、ピークの55%という水準。1−7月の受注累計は7832億円(前年同期比29・8%減)と日工会の年間受注の年初見通し1兆6千億円はまず達成できそうにない。日工会・飯村幸生会長は「月間1千億円レベルが1年ほど続くのではないか」と話す。

設備増強、供給力強化

 米中の関税合戦が市場に与えた影響は大きいが、そのせいとばかりは言いたくない。「米中貿易摩擦の影響で景気が後退しているが、これがなかったとしても過熱した景気はいつかは縮小したはず」(オーエスジーの石川則男社長)の見方もある。そのうえで「今後は5G(第5世代移動通信システム)やIoTが生産財を潤すに違いない」とする。
 「一喜一憂しない、と腹を決めている」と話すのはオークマの家城淳社長。「市況の先行きは不透明だが、工作機械は中長期的に成長する産業」と先を見据える。であるならばメーカーもユーザーも次の受注拡大期に向け生産設備の増強、供給体制の強化を行うべきだろう。
 実際そうしているメーカーは少なくない。ヤマザキマザックは三重県いなべ市に現工場の約2倍の延床面積をもつ新工場を建設、今年度中の全面稼動を予定する。欧州などで投資を続けるDMG森精機は来年までに3割増産する一方で今年7月には伊賀事業所(三重県伊賀市)内に「グローバルパーツセンタ」(床面積1万2810平方㍍)を開所。米ダラスのパーツセンタもより立地のよい場所に2年以内に移転するという。オークマは可児工場(岐阜県可児市)に建設した生産拠点DreamSite3の迅速なフル稼働を目指す一方で台湾(第2期の新工場建設)、中国(江蘇省で生産子会社立ち上げ)など東南アジアの生産能力を強化する。
 ビッグ3だけではない。ファナックは本社工場内にあった2棟のサーボモーター部品加工用の工場を集約し、今年9月に新棟を竣工し生産性を2割向上する。アマダホールディングスは富士宮事業所内にファイバーレーザー加工機用の基幹モジュールを生産するための工場を来年完成させ生産能力を現状の2倍に増やす計画だ。
 太陽工機は2030年に現状のほぼ倍増の売上200億円を目指し、工場を移転・拡張する予定。「ガイドやボールねじの需要が来年あたり、大きく動き出すのでは。今年抑えられてきた半導体関連やロボットの需要が一気に増えるから。現在、直動ガイド向けの新たな研削盤を開発している」(渡辺剛社長)と言う。

盛んなAI・5Gの研究

 研究も盛んだ。いま進められているというAIを使った熱変異補正の研究は、ますます高精度化する工作機械で長時間の無人運転をする際に有効と考えられる。とりわけ寒暖の差が激しい日本では重要になりそうだ。
 2020年に実用化されるという5Gを睨んだ研究開発も進められているようす。DMG森精機は今秋、伊賀事業所内に5G基地局を設置し、実証実験を始める。今や工作機械の価値の半分はプログラムとソフトになってきていると言われ、個々のマシンでそれをアップデートするための書き換え作業が5Gなら迅速にできるようになるという。