連載

2019年10月25日号

日本設計工業、マテハン精通するライン・ビルダー

先人の知恵に学ぶ、標準化を推進

 50本入りのラックから試験管1本を片手で器用に取り出して掴み、5本入りのラックに移し替える。もう一方の手はそっとラックの端を押さえてズレを防ぎ、移し終えたラックを移載テーブルへ――血液検体搬送マテハンユニットと連動する人型双腕協働ロボットの動きは、まるで人間のよう。日本設計工業が開発したこの複合システムは医療・製薬関連施設向けに好評の装置だ。
 モニタ上の作業指示本数を目(ビジョン)で見て確認し、指でボタンを押して次の作業指示を出すのも人間くさい。システムを完全にデータ連携させず、人とロボットを交代させやすくしているのだとか。
 ただ、「ベテランの人に比べれば協働ロボットの動きはまだまだ遅いし、凄い動きもできません」。名倉慎太郎社長の目線は鋭かった。「ロボット『でも』動きやすいように周辺環境を整えることが、ひいては高齢者や初心者も働きやすくする。多様な人材が活躍しやすい環境を整えれば、人手不足なんて無くせるでしょう」。
 重いモノは近くに、高いところのモノは低く。現場課題を細やかにくみ取りつつ、負荷や無駄な動きを少なくするには、マテハン装置を含めた総合的なライン設計・構成ノウハウが欠かせない。こうした「ライン・ビルダー」としての総合力こそが、同社の競争力の源泉と言えよう。
 「プログラム次第で様々な作業ができるフレキシブルさはロボットの魅力ですが、100%の完全自動化ライン構築はコスト面でも無理がある。人にしかできない作業を残しながら、それ以外の90%までを自動化・ロボット化するのが理想では」

■46年の知恵を結集
 設立は第一次オイルショック真っただ中の1973年。浜松市出身の20代の若者達が高校の同窓会に集まり、「何か新しいことをやってやろうぜ」の勢いでスタートしたと言う。試行錯誤を繰返し、最初に軌道に乗ったのは農協向けの果樹用外形形状選果ライン。袋取りから選果、搬送、箱詰めまでの自動化を一手に任されていく中でマテハン機器設計・製造、製造ライン設計・構築、コンピュータ制御の技術を同時に習得し、これが後の主力となる自動車などFA向けライン、FPD製造ラインのシステムインテグレーションの基礎を作った。AGVとの連携もお手の物。清掃性に優れた中心に軸の無いコンベヤはクリーンルーム向けに開発したものだが、AGVがコンベヤ中央まで入り込みやすい効果もあり、取り合い調整のロスもなくした。
 「特殊な技能を持たない凡人が、世の中に役に立つにはどうすれば良いのか」。同社の経営方針は今も、創業当時の熱を帯びたままだ。重要視するのは「先人の知恵を活かす」ことにある様子。つまり、46年の歴史の中で培ってきた試行錯誤の成果を標準化・共有化して使いこなすことで、設計の無駄を省き、若手の育成を加速させられるのだと言う。
 社内には標準化部門を設置し、過去の事例に学びつつ新しいマテハン機器・システムの開発を実践。工場内には、技術者垂涎ものの自社開発のコンベヤやアルミフレームが約400種も並ぶ。「先人が知恵を絞って生み出した現物を見ながら考えれば、使えるアイデアが浮かぶ。ライン設計は一品一様とは言え、共通する部分は必ずあるはず」。名倉社長は目を輝かせてこう話す。
 標準品は調整時間を省け、海外展開に向いているとも。「標準品を中心に現状25%の海外売上比率を拡大し、全体の年間売上を現在の30億円から50億円に成長させたい」と展望した。

(写真:血液検体搬送マテハンユニットと連動する人型双腕協働ロボット)