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作業工具の価値

―今号(10月25日号)の紙面特集より、ここでは作業工具の価値を掲載―。
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様々な材質の切断が可能な、
スーパーツールの「ベアリング装備チューブカッター」。
指の力だけで切り込みできるという

 モノづくりに欠かせない「作業工具」の価値に着目した。業種を問わず急ピッチで進む自動化と比べれば、一歩ずつ、着実に進化を続ける作業工具は、ともすれば変化に乏しく感じるかもしれない。しかしその細部に目をやれば、開発者のこだわり、高い技術力、他社との差別化ポイントなど、メーカーごとの創意工夫が光る。時代を越えて愛される、作業工具の「良さ」を各社の売れ筋製品から探った。

ブランド力にさらなる磨き

 モノづくりの原点ともいわれる作業工具。今も昔も、変わらぬ魅力で人々を惹きつけている。
 機械化が進めど魅力があせない一番の理由は、「作業工具でしかできない作業がある」からだろう。多くの職人が作業工具を「手の延長」と捉えており、経験に裏打ちされた熟練の感覚を機械に代替するのは、ことのほか難しいようだ。しかしそれだけではない。工具メーカーが長年築きあげてきた「ブランド力」が購買の決め手になることも。長年使い慣れた安心感、そこから生まれたブランドに対する信頼とも言えるだろう。
 シンプルかつ、良いものをつくる。作業工具の原点ともいえるこの命題を追求したのが、ロブテックスの「J―CRAFT」シリーズだ。ラインアップは▽ペンチ▽ラジオペンチ▽強力ニッパー▽斜ニッパー▽マイクロニッパーなど18種類。今年4月には、狭所でも開閉が容易な先端横曲がりラジオペンチ「Ropross」も加わった。
 いずれも「つかむ」「曲げる」「切る」などの基本性能を高めたこだわりの日本品質で、高い精度と強靭さ、鋭い切れ味が持ち味。プロ・アマともに満足する高品質工具として、今後順次ラインアップを拡大予定という。
 「本当に良く切れるため、切り口がきれいでプラモ製作にも向く。プロはもちろん、ホビーユーザーの方にこそ、従来品との違いを感じてほしい」(ロブテックス)。
 ほかにも、売れ筋としてポンププライヤ「ハイブリッドアンギラス」を挙げる。同製品の先端部は、上歯と下歯で接触位置が異なる非対称型。3点接触により薄板を確実につかめるほか、ナットやパイプもガッチリとくわえこむことが可能だ。口元の鉄線用カッターによる針金の切断や、先端部の溝加工によるつぶれた小ネジの取り外しにも対応。まさに、配管・電気工事に必要な機能が1丁に凝縮された工具といえるだろう。
 それだけの多機能ながら、従来品比で37%軽量化した点も見逃せないポイント。腰周りの負担を軽くしつつ、持ち替えの手間も省いた。
 今年8月に開かれた「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW」では、ヒット商品部門でベストヒット賞を受賞。発売から1年以上が経過したが、「通常のプライヤーとしても便利で、業種を問わず引き合いが多い」という同製品の躍進はまだ続きそうだ。
 一方、フジ矢営業部の森信明部長がいち押し製品に挙げたのが、上質工具の「黒金シリーズ」。
 黒を基調に金色のワンポイントをあしらったシックなデザインで、「めっき処理により通常の皮膜と比べさびに強い」特長をもつ。ニッパやペンチ、モンキレンチ、腰袋に至るまで幅広く取り揃えた。
 「フジ矢といえばオレンジ色のグリップという印象が強かったが、近年は『腰周りをお洒落に統一したい』という職人も増えている」(森部長)。そういったユーザーの支持を得て、売れ行きは順調に推移。ラインアップも順次拡大していく予定だという。
 2015年には「VICTOR」ブランドの花園工具を子会社化。最新設備による高精度加工と熟練の職人技術を融合させた高品質工具「VICTOR PLUS+」シリーズも展開している。
 「フジ矢のもつ技術の中で、一番良いものをつぎ込んで作った」という同シリーズのこだわりは製造工程に集約される。例えば刃付け。「わずかな研ぎ方の違いが耐久性や切れ味を左右する」肝ともいうべき工程だが、担当するのは15年以上の経験を持つ熟練の職人だ。研磨も重要工程と位置づけ、職人の手作業によって磨かれた本体にメッキ加工を施すことで、高級感のある鏡面を実現している。
 花園工具に加え、17年には「WISE」ブランドの若穂囲製作所をグループ化。「ピアスボールレンチ」などユニークなボールポイントレンチを展開している。同製品は、先端部の傾斜を「線に対して15度ずらした」ことで、締めるために最低60度は必要だった反復角度を30度にしたことが持ち味。従来の六角レンチではまわせなかった、限られた空間でのネジ締めを可能にしている。。
 様々な新製品が市場を賑わす作業工具業界だが、そのなかで、発売から40年以上が経過してもなお、売れ続けている製品がある。スーパーツールの「チューブカッター」シリーズだ。
 シリーズ累計で年間80万丁売れるという同製品最大の特長は品ぞろえの豊富さ。チューブの材質ごとにその切断に特化した機種をラインアップしており、対象は軟質管や硬質管、被覆管、フレキ管など幅広い。
 切断対象を選ばないオールマイティタイプ「ベアリング装備チューブカッター」も用意している。通常、スチール管やステンレス管などの硬質管の切断時にはかなりの摩擦抵抗が発生するが、同製品の場合、ベアリングで受けることによって従来品の3分の1ほどの力で切断できるという。
 「様々な素材を切断する場合はベアリングタイプを、同じ材質ばかりを切断する場合はそれぞれに特化したタイプをおすすめする。現場に合った機種をお使いいただくことで、作業効率を格段に高めることができる。これほどシリーズ化しているのは国内でも当社だけ」。営業企画開発部の松本眞一次長はそう自信を見せる。
 長年にわたるラインアップの拡充が功を奏し、油圧・空調配管業者を中心に根強い支持を獲得。「今や『チューブカッター=スーパーツール』と認識いただいている方も多い」というほど盤石な地位を築いているようだ。

電動と手動の「中間」を攻める

 ネジやボルトの締め作業をパワーツールで効率化したいが、最後は慣れ親しんだ手締めの「感覚」がほしい。そんな思いから、電動工具と作業工具を両用するユーザーも多いだろう。
 パワーツールと作業工具の中間。ありそうでなかった「絶妙」なラインの需要をすくい上げ、「電ドラボール」として具現化したのがベッセルだ。
 USB充電ができる電動アシストドライバーとして売り出した。ボールグリップ型のボディ内部には、リチウムイオンバッテリーと小型モーターなどを搭載。電動で早回し後、工具を持ち替えることなく手回しによる本締めが可能になった。
 本体重量は160㌘と、従来の手動ドライバーとほぼ同じ重さまで軽量化。腰袋に入れても負担にならず、各種ビットを揃えれば「作業に必要な最小限の機能を集約できる」という。
 手動時の耐久トルクは10N・mだが、電動時はあえて控えめな2N・mに設定。これは、メインターゲットである電気・設備工事業界への調査とトライを繰り返し、導き出した数値だ。「端子台などの締付け時には、従来のペン型電動ドライバーではパワーが過剰。トラブルを防ぐため、手回しドライバーに持ち替える必要があった。トルクを2N・mとすることで、樹脂器具を壊したり、ネジ穴を潰したりすることなくお使いいただける」(企画開発部)。
 モバイルバッテリーからの充電も可能で、約60分充電すれば「ほぼ一日は作業可能」。そういった手軽さも受け、電気設備工事、機械設備のメンテナンス、組立、DIYなど幅広いユーザーからの支持を得ているようだ。
 「今回は電気工事士をメインターゲットに据えたが、そのほかパワーや仕様について様々な要望が届いている。今後はそういったニーズに応えたラインアップの拡充も考えていく」という。
 今年の「電設工業展」では奨励賞、「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW」では新商品部門で経済産業大臣賞を受賞。注目度をますます高めている。
 一方、ラチェットハンドルに着目したのがTONEだ。電動と手動の良さを兼ね備えた「電動ラチェットハンドル」は早回しと手動での本締めを1丁で行える利便性がウリ。スイッチを押すと先端が独立回転し、フル充電で17ミリナットを約700本締め付けできる。
 電源線やエアホースなど、携帯の妨げとなるコード類は一切不要。「従来のエアーラチェットハンドルはエアー環境の整備に手間がかかり、騒音も発生することから使える現場が限られていた。場所を選ばず使える小回りの良さが受け、自動車や二輪、農機具整備など様々な業界から予想を上回る反響があった」(営業企画部間島俊弥主任)という。
 手動時の最大トルクは本締めも可能な610N・m、電動時は「ボルト・ナットの着座時にハンドルが持っていかれない」1N・mにそれぞれ設定した。エンジンルームなど奥まった箇所へもアクセスしやすく、付属のナットキャッチマグネットを装着すればボルト・ナットを保持した状態での作業も可能になる。
 差込角は12.7ミリ。本体に加え、持ち運びに便利な収納ケースやリチウムイオンバッテリー2本、専用の充電器などが付属する。

特定ターゲットへ「深く刺さる」工具

 作業工具は、シンプルなフォルムと機能ながら、業界・業種を問わずに使われている。反面、ターゲットを鋭く見定め、その現場や作業特有の「困りごと」の解決に焦点を当てた製品も、一定の支持を得ている。
 山間部に足を運ぶと、よく目にする防獣フェンス。猪などの害獣から農作物を守る、農家の必需品だ。設置のためには支柱を地面に打ち込む必要があるが、従来のハンマーでは打点が高いため打ち込みにくく、身長によってはミス打ちが起こりやすいなど安全性と作業性に課題があった。
 そこに着目したのが、オーエッチ工業の「杭打ちハンマー」だ。使い方はいたってシンプル。パイプ状の柄の内部に杭を差し込み、設置する場所に合わせてハンマーを上下にスライドさせるだけ。「シャフトがガイドになることで打ち外しがなく、脇が締まった体勢で打ち込めるため力を入れやすい。高齢者や女性など力の弱い方にも安心してお使いいただける」という。
 シャフト部で最後まで杭打ちできるが、ハンマーとしての使い勝手も追求した。ヘッドの底面や側面を幅広かつフラットにすることで、「すべての面で打てる」形状に設計。大ハンマーとして使えるほか、側面で竹の杭を打ち込んだり、底面で地ならし作業を行うなど幅広い用途に活用できる。
 一見しただけでは使用方法が想像しづらい。そこで、販促用ラベルにQRコードを載せ、紹介動画を見られるようにするなどPR方法も工夫している。「実際に杭打ちができる実演キットを作成したり、ユーザーの目につきやすい展示を心がけている」という。そういった取組みも奏功し、「売れ行きは予想以上」と同社。さらなる認知度向上に期待がかかる。
 「ネジ外しといえばエンジニア」のイメージを浸透させた立役者、ネジザウルスシリーズ。そのラインアップに今年、電設用ペンチ「ネジザウルスEL」が加わった。
 最大の特長は従来品に比べ30%向上したという強力な切断力。VVF線φ2.6ミリ×3芯を一発で切断するほか、軟鉄線φ3・2㍉、ステンレス線φ2㍉などのカットが可能だ。
 ペンチとしての性能も申し分なく、ネジザウルスの特徴であるタテ溝の位置をペンチ中心から4㍉ずらすことにより、使用頻度の高いインシュロックも確実につかめるようになった。従来のネジザウルスシリーズ同様、つぶれたネジ、さびたネジの取り外しも可能。トラスネジも含めたφ3~9㍉までのネジ頭サイズに対応する。
 工具以外にも、ネジはずしを支援する製品を取り揃えている。塗布するだけでネジのサビを数秒で除去する「ネジザウルス・リキッド」がそう。浸透の早い液体タイプと、壁面でも垂れずに密着する泡タイプの2種類をラインアップしている。「中性のため、環境と人体の両方に優しい。特に泡タイプの売れ行きが好調」という。
 「元々はネジザウルスシリーズと一緒に使われることを考えて開発したが、キッチン周りや自転車・二輪車のさび落としなど、予想とは違った層からの引き合いが多い」(営業担当者)といった想定外の反響も。好評に応え、今年6月には4㍑の大容量タイプも発売。大きな部品のどぶ漬けも可能となり、用途がさらに拡がった。
 配管業者の必携工具ともいえるパイプレンチ。それを壁際や溝中などの狭所作業でも使えるよう、改良したのがコーナーレンチだ。どちらもMCCコーポレーションが幅広く取り揃えており、担当者も「ウチが元祖」と自信を見せる。
 発売当初は鉄管に歯を食い込ませて使うタイプが主流だったが、被覆鋼管のコーティングを破らずに使える歯の細かいタイプ、2本並べて互い違いにパイプを回してもぶつからない薄型コーナーレンチなど、時流に合った製品を送り出し、ファーストランナーとしての地位を確立してきた。「『元祖』として他社には負けられないとの思いでラインアップを増やしてきた。そういった点が支持され、売れ行きも安定している」という。
 シリーズ最新作として、丸パイプ以外に金属継手も締め付け可能な「ポリパイレンチ」も登場。ラチェット機構搭載で「面倒な差し替え作業なしで連続締め付けができる」作業性の高さがユーザーの支持を得ている。
 TONEの間島主任が、「絶対に作業ライン向きです」と太鼓判を押す製品がある。このほど発売した「クイックフィットソケット」だ。
 最大の特徴は山の形状。通常の12角ソケットの山を「ひとつ飛ばしでそぎ落とした」独自の形(特許取得済み)で、6角ボルト&ナットに対してラフに噛み合うことができるという。
 「従来の6角や12角ソケットは噛み合わせに遊びがなく、締め作業の連続する現場では時間がかかる要因になっていた。クイックフィットソケットなら押し付けるだけでピタッとはまるため、作業時間の短縮につながる」
 先に発売したホイールナットタイプは、口コミで評判となり売れ行きも好調。間島主任も「発売から間もないが、反響は大きい。おススメはT型レンチとの組み合わせ。作業性が飛躍的に高まる。生産ラインなど、新品のボルトを数多く締める環境でお使いいただきたい」と話していた。