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電力小売自由化、16年春から家庭にも

電力システム改革、3段階で実行

  名称未設定-2どの電力会社から、どんな料金プランで「電力を買う」か―消費者が自由に選べる時代がやってくる。すでに電力小売の自由化が進む大口需要家向け以外に、2016年春からは一般家庭用の自由化もスタートする予定。大口需要家では「新電力」を選択することで1~3%の電気代削減が可能になるケースもあり、一般家庭でも電気代削減に期待が高まる。再生可能エネルギー由来の電源や、節電努力を対価として支払うデマンドレスポンスなど、選択の幅も大きく広がりそうだ。

■PPSの動きが加速
 経済産業省が2013年2月に公表した「電力システム改革」では、3つのステップを踏んで電力事業の全面自由化を目指す(表)。
 現時点で電力小売事業の自由化対象になっているのは特別高圧受電もしくは高圧受電かつ契約電力が50kW以上の需要家で、中規模以上のコンビニ、大・中工場や大規模オフィスビルなどに相当する。新電力(特定規模電気事業者、以下PPS)の数は2014年12月時点で約440社(実稼働は50社と推定)あり、PPSの供給シェアは5〜6%と低いが、改革の進展で状況は大きく動きそうだ。
 既にPPSからはこんな声が聞こえる。「現時点でPPSは託送(発電所から需要地への送電)を既存電力事業者に委託しているが、東日本大震災以降、託送料金が大幅に下がりPPSが価格メリットを提案しやすくなった」(日本アルファ電力)。
 高騰する電気料金もPPSに注目が集まる大きな要素だ。資源エネルギー庁の調査によると2013年度時点の電気料金の上昇率は家庭用が2010年度比19.4%増、オフィス・工場向けが28.4%増。地域・プランによっても上げ幅が異なり、石油への依存度が高い北海道電力では2014年10月1日からさらに、平均約17%の値上げを実施している。

■電気代削減へPPSに期待
 2015年4月から家庭用電灯料金の10%再値上げを表明した関西電力の管内。「大阪電力選べる環境づくり協議会」が大阪市内で12月9日に行ったセミナーにはほぼ満席となる約80名の経営者らが集まり、「新電力」への期待値の高さを示した。
 PPSの代表として講演に立った日本アルファ電力の若濱真之介社長によると、「営業費用や調達コストを圧縮することで、割安な電力の提供を可能にする」という。さらに、「万一停電した場合でも公平に復旧することが公正取引委員会で取り決められている。切り替え時の設備投資は一切不要で、通信設備などを設置する場合は電力会社の負担。契約は申込み書のやり取りだけ」と活用を促した。
 既存電力会社からPPSへの契約切り替えによる値引き率の目安は1〜3%で、最大でも約5%。オリックス・電力事業部の削減事例ではオフィス物件22件で順次契約を進めた結果、22件の合計で年間221万6千円、約3%の電気料金削減が可能になった。
 ただ、PPS各社は「契約内容や使用状況によっては、メリットが出にくい物件もある」と注意を促す。「電力切り替えによる価格メリットが低く、契約を勧めにくいケース」としては、(1)蓄熱割引など特別な割引契約をしている、(2)24時間稼働の工場・コンビニなど時間帯や季節、休日・平日で使用状態に差が無い場合、(3)電力使用量が大きい工場など負荷率(最大使用可能電力量に占める実使用電力量の割合)が40%以上になる―などがある。
 「電力使用量が大きい場合でも電気を2社から購入する『部分供給方式』の導入でメリットが出るケースもある。PPS各社の得意分野があるので個別に相談してみてほしい」。協議会事務局の大阪府政策企画部はこうアドバイスする。事実、大阪府の咲洲庁舎では2014年度から部分供給方式を導入した結果、「同年度の電気代削減見込み額は約1200万円」(大阪府)になるという。

■グリーン電力の選択やDSも
 2016年春には一般家庭を含め、電力小売事業の全面自由化がスタートする。自由化への期待度を聞いた消費者調査では、電気料金の抑制や多様な料金メニューの提供、電力会社の選択の幅が広がることなどに注目が集まった(グラフ参照)。  PPSの参入でどこまで価格が低減するのかはまだ不透明だが、経産省「電力広域的運営推進機関」の設立準備組合(検討会)に参加する事業者によると「5~10%の値引き率で契約切り替えのモチベーションが上がるとみられている。エリアやプランにもよるが、より電力を使う世帯や、逆に単身であまり電力を使わない世帯などで切り替えメリットが大きくなるのでは」とみる。
 電力自由化で先行するドイツでは、太陽光や風力などのグリーン電力のみを供給するPPSも消費者に人気を集める。日本でも、グリーン電力購入希望者の増加をにらんだPPSの動きが進展中。ソフトバンググループのPPS・SBパワーでは50kW未満の太陽光発電事業者を対象に、固定価格買取制度(FIT)で定められている調達価格に1円/kWhを上乗せした金額で買い取るサービスを始めた。
 需要ピーク時の節電努力が対価として支払われる「デマンドレスポンス」(DR)サービスも注目ポイントだ。法人向けでは、PPS最大手のエネットがDRサービスを実施。そのほか、マンション一括受電契約とDR、省エネ診断を組みあわせたサービス(オリックス)なども始まっている。
 家庭向けのDRには需要状況をリアルタイムに測定する「スマートメーター」が必要になる。2020年前後にはスマートメーターが各家庭に普及するとみられ、家庭用蓄電池の価格低減、太陽光・風力発電の普及拡大、ビッグデータ活用の進展と相まって、電気代削減に向けた消費者の選択肢が大きく広がっていきそうだ。