連載

2020年3月25日号

トライエンジニアリング、自社ノウハウをブランド化

切削・摩擦接合・研磨をロボットで

 全面ガラス張りの真っ白な社屋に「TRI」と凝った英字ロゴが記されている。
 「付加価値をどう見せるか。ロボットを含む様々な装置をお客様の工場に導入するには、その選定や組み合わせにノウハウが必要になります。当社のノウハウをブランディングしていかねばなりません。でなければSIerはただの鉄工所か器用貧乏になりかねません」
 垢抜けた社屋を話題に出すと、トライエンジニアリング(愛知県名古屋市)取締役の岡丈晴・営業部長兼開発部長はそう切り出した。同社は1991年に世界で初めてボンネットの外周を折り曲げるロボットヘミングシステムの開発に成功し、これまでに国内外の自動車メーカーを中心に360システムを納入。16年から始めたロボットマシニングおよびロボットFSW(摩擦撹拌接合)はそれぞれ15、7システム納めた。まだ数台の納入実績ながらここ1、2年はポリッシング装置の引合いが医療分野などから急増しているという。研磨は熟練を要し、作業者の高齢化が進み、3Kにもつながる。「10年内に自動化しないと事業継続ができないと危機感を抱く企業が増えています」。
 同社が手がける装置はいずれもワークに触れる加工用途だ。普及した塗装、搬送、溶接用途などのロボットと違い、加工にはマニピュレーターに大きな力がかかる。「ロボットは様々な分野に広がりましたが、ワーク接触時の反発力を制御しながら動作することに対してあまり研究されていません」と岡部長は言う。アームに力が加わるということは動作の精度低下につながりかねない。
 「金属の加工には工作機械が最適と考えられますが、本当にそうでしょうか。0.01ミリ以下の形状精度で加工したい人ばかりではない。0.1ミリで十分という人もいます。それならロボットで切削すればワークサイズや削る方向に制限を受けません」
 ロボットは剛性の高い欧州製のなかでも他社があまり扱わないストーブリ(本社スイス)製を好んで使う。日本製は力が加わった状態での動きをあまり想定していないからだ。加工精度は日本製で一般に0.2~0.3ミリとなるところ、ストーブリなら0.1ミリ以下だという。

 プロデュース力がカギに
 社員38人の会社ながら拠点が多い。名古屋市の本社・本社工場のほか、瀬戸工場(愛知県瀬戸市)、研究所は3つ(名古屋市に2つ、東京都港区に1つ)もある。「ハードウェアづくりは自動車・航空機分野のユーザーが多い名古屋で行うのがいいと思いますが、ITの開発は海外のソフトメーカーの日本拠点が多い東京が適しています」と岡部長は説明する。名古屋にはサイエンスパークが多く、医療分野向けの「なごやライフバレー」(名古屋中心から約10キロ)に1万平方メートル弱の土地を確保したことから、ある程度拠点の集約も予定している。
 近年はこれまでにロボットを扱ったことのない加工会社からの引合いが増えた。そのため同社はプロデュース力が求められるという。
 「ロボットはどんな使い方もできる反面、カタログ的な商品ではない。うまく使うには導入する側も勉強してもらう必要があります。ロボット補助金で導入したものの使われることなく埃をかぶっているものも少なくありません」
 東京に研究所をもつことからも窺えるが、IoTやデジタル技術にも力を注ぐ。「5G(第5世代移動通信システム)が使えるようになればウチの技術者が現地に行かなくても保守対応できるようになると期待しています」

(写真=切削加工に耐える堅牢なアームをもつ国内外のロボット)