連載

2015年1月1日号

超硬材の直彫り型を量産

低コスト・短納期で東南アジア進出へ
東京鋲螺工機[ヘッダー・プレス金型、微細精密加工]
埼玉県新座市

 2年前のJIMTOFあたりから注目されるようになった超硬合金の直彫り。研削や放電に頼ってきた超硬材の加工を切削だけで完結しようとするもので、この動きを加速させた立役者の1社といっていいだろう。
 東京鋲螺工機(1961年創業、従業員28人)は「Tokyo−ACE」と名づける超硬直彫り金型を2011年2月に「量産」開始。高精度のマシニングセンタとダイヤモンド工具を用い、ラップレス(磨きレス)で1ミクロンの精度を安定して生産する。主力製品の電子・自動車部品向け超硬製ヘッダー金型は月産1000~1500個。高精度の金型をそんなにたくさん、と驚くが、熟練技能を要し数万~数十万円の冷間閉塞鍛造プレス金型はこの1割ほど。多くは写真のように直径15ミリくらいの円柱材にわずかな凹みがある金型。「単価は1万5千円〜2万5千円なのでこれくらいつくらないと仕事になりませんよ」と高味寿光社長はあっさり言う。
 ヘッダー金型とは、ヘッダーと呼ばれるネジなどを量産するための圧造加工機に用いる金型。小ネジ類を1分間に約200個、ベアリングの球なら1000個ほど生産するという。そんな過酷な環境で使われるため、ヘッダー金型が超硬材に落ち着いたのはもう数十年も前のこと。圧造する際にワークが金型に付着しないような高度な工夫も必要で、だからこの種の仕事が日本に残っているといえる。ただ、比較的単純な軸径2ミリ以下のマイクロネジの仕事はもう国内にほとんどないという。

■タイでも直彫り
 直彫りといえばヒトデのような形の深い窪みのあるベベルギアの鍛造金型などを連想しがちだが、東京鋲螺はこれを扱わない。「10ミクロン程度の精度で許されるものならやらないこともないが、ウチは低コスト、長寿命、短納期の金型を量産するのが前提。価格では東南アジアにも勝てる」と高味社長。だから5軸機や専用の治具を利用することにはあえて手をつけず、3軸機を無人で24時間稼働させることに集中した。もっとも細穴→ワイヤ→形彫→ラップと昔ながらの放電加工がまだ多くを占めるが、直彫り仕事がジワジワ増えてきた。
 「金型は10%、20%安いくらいでは誰も振り向いてくれない」 高味社長はそう実感を込めて話す。だからTokyo−ACEで勝負しようと決断したのだ。
 それを後押ししたのはリーマン・ショックだった。売上の9割近くを占めていたパソコンや携帯電話、デジカメ用の小ネジの金型受注が10分の1か2まで落ち込んだ。タイミングがいいのか悪いのか、4階建ての新社屋が完成したのもこの時期だった。従来の延長線上の仕事では苦境を脱せないと思い切らせた。
 東南アジアや中国からの受注も増えてきた。「複雑化している自動車部品を手持ちの設備を生かし、なるべく少ない金型で仕事をしたいというニーズがある」ためだ。これを足がかりに同社は7月にタイのバンコク郊外で工場を稼働させる。ここでもやはり職人の技能が要らないラップレスの直彫りを行うという。