識者の目

金型でもデジタル活用、解析・加工がスムーズに

 第4次産業革命として紹介されたドイツのインダストリー4.0の概念の一部は、IoT(モノのインターネット)技術に支えられて製造現場の「見える化」として具現化され、設備の稼働状況や故障をリアルタイムで見せることで生産効率の改善や設備の予防保全に役立っている。こうした先進技術のように金型加工技術やそれを支援する周辺技術におけるデジタル革命の動向に注目したい。

■誤差なくすデジタルツイン
 製造システムの革新技術の1つにデジタルツインが挙げられる。デジタルツイン(デジタルの双子)とは、フィジカル空間(現実の世界)の環境をサイバー空間(計算機内の世界)に構築し、現実の世界で生じる現象を計算機内の世界で再現(シミュレーションで予測)することを指す。これまでのシミュレーションと異なるのは、シミュレーションに用いるモデルが現実の世界で生じる現象を正確に予測できるように修正・改善される点である。
 金型設計においてはCAE(有限要素法)が活用され、プレス成形では製品のスプリングバックを考慮した型設計が、ダイカスト成形や射出成形では型内の流動性や温度分布を考慮した型設計が実施されている。金型加工においてはシミュレーションによる切削力やびびり振動の予測結果に基づいて切削条件の最適化が試みられている。これまではCAEによる解析結果やシミュレーションによる予測結果には必ず誤差が含まれており、誤差による悪影響を排除するために熟練作業者の経験やノウハウが必要とされてきた。今後は図中の破線で示した加工中のモニタリング結果と金型や成形品の計測結果をフィードバックする仕組みが非常に重要となり、CAEやシミュレーションに用いるモデルを修正・改善して解析精度や予測精度を向上させる技術が求められている。このモデルを修正・改善する手段としてAI(人工知能)や機械学習の活用が考えられている。

■点群モデル使えるCAM
 光学式の3次元スキャナに注目が集まっている。計測時間が短いことに加えて、計測精度が飛躍的に向上し,導入コストが低減したためである。例えばプレス成形用の金型では試し打ちを繰り返して所望の成形品が得られるように金型の形状が修正される。修正された金型形状は3次元スキャナで計測され、計測データは金型の複製を加工するために利用される。ところが計測データとして得られる3DモデルはSTL形式の点群モデルで、これをサーフェースモデルに変換しなければCAMで扱えない。筆者らはSTL形式の点群モデルから直接NCプログラムを自動生成できるCAMを開発している。加工対象(ここでは置物を例に示す)から3次元スキャナで作成したSTL形式の3Dモデル、STL形式の3Dモデルから自動生成されたNCプログラム、自動生成されたNCプログラムで加工された置物の複製を図2に示す。このCAMを使用すれば、3次元スキャナで計測してから僅かな時間で加工を開始することができる。

神戸大学大学院工学研究科 教授 白瀬 敬一 氏 (型技術協会 副会長)