識者の目

後処理工程の重要性と最近の動向

 地球環境問題に対応するため、CASE(Connected Autonomous Shared Electrification)に代表される自動車の電動化技術が急速な進展を見せており、その影響は加工技術の様々な分野にも及んでいる。
 そのために加工技術の精密化はもちろんのこと、微細加工やAM加工が採用されているが、いずれも加工後のバリ取り・エッジ仕上げや洗浄などの後処理工程がますます重要な課題となってきている。
 製品の機構部品の加工後においてバリ取りや切りくずの洗浄が不十分な場合、(1)油空圧機器の作動不良(2)組み立て時の合わせ面のはめ合いを阻害(3)歯車のかみ合い時における騒音増大や磨耗増加−などの様々なトラブルを引き起こすことになる。
 このことからも後処理工程の重要性は自明であるが、その後処理工程の確実性を得るためには加工プロセスにおいて生成したバリの除去性や切りくずの排出性および洗浄性を確実に高めておくことが何よりも求められる。
 これらのことを考慮して最近注目されている技術の一つに、トクピ製作所が開発した超高圧クーラント法が挙げられる。
 従来の切削油剤の供給法では切削加工点における工具刃先にクーラントが十分に到達しないため、切りくずの理想的な生成プロセスに良好な効果をもたらさず、また工具摩耗の進展がバリ生成をもたらす原因となる。この超高圧クーラントの供給によってバリ生成を抑制するとともに、部品内部に発生・細分断した切りくずを生成して排出性や洗浄性を高め、後処理工程の簡素化をはかれることが実証されており、インコネルやチタンなどの難削材に対してその効果が大きく認められる。

■効率UPの鍵は後処理工程の合理化
 スギノマシンでは生産リードタイムの削減と後処理工程における清浄度の向上を図るために、同社独自のウォータージェット技術を活かし、水中洗浄槽を備えたターンテーブル付きの「タレット・水中洗浄・乾燥マシン(JCC 421 UT)」が新たに開発された。同機のシステム構成は前方に乾燥室、後方にウォータージェット噴射ノズルを取り付けたタレットヘッドを有する水中洗浄槽を持つ洗浄室よりなっている。水中洗浄後、気中で噴射ノズルの移動による高圧狙い撃ち洗浄を行い、さらに生成したバリや残留した切りくずが部品内面に再付着することを防ぐためにシャワーリング洗浄を行っている。
 また、乾燥室には要求乾燥度に合わせたエアブローによる乾燥アプリケーションが用意されている。同機により、後処理工程を確実に実施することができるとともにサイクルタイムの短縮が達成できることが期待される。
 昨今の人手不足・技術者不足を補完するためには、自動化技術が必須であることは言うまでもないが、サイクルタイム短縮のキーポイントは後処理工程の合理化にあると言える。その向上を目指した最近の技術動向についてほんの一部しか紹介できなかったが、ご参考になれば幸いである。

関西大学名誉教授 (公社)砥粒加工学会 バリ取り加工・研磨布紙加工技術専門委員会 委員長 北嶋 弘一