連載

2020年8月10日号

ICS SAKABE、小型ロボ持ち込みで出前教育

見せて、触れて、身近な存在に

 システムインテグレータのショールームに似つかわしくないマンション1階のテナントオフィス。天井まで3㍍もない。設置されている6台の多関節ロボットは、どれも膝程度の高さ。商用車の後部座席へ移し変えやすいように、ロボットの脚回りをフレームで囲って安定性を高めている。
 ICS SAKABE(福岡県北九州市、2003年設立)が小型機にこだわるのは「出前教育」に使うからだ。昼休憩や終業後に出向き、空いたスペースでロボットの動きを確認してもらったあと、ティーチペンダントに触ってもらう。その狙いについて、坂部好則社長は「ロボット導入に対する不安を払拭するため」と話す。
 「経営者は社内から反対意見が出ることを恐れている。『ロボットに仕事が奪われてしまうのでは』との誤解を生みかねないからだ。もちろんそんなことはない。むしろ単純な工程を自動化することで、ヒトにしかできない改善や開発に注力できる」
 現場で働く人たちの理解を得るために、展示会や工場に招こうにも生産計画の関係で全員に見てもらうのは中々難しい。「それなら乗り込むしかない」ということで2017年に開始した。
 ロボットの案件は年間3~4件に留まっているものの、坂部社長から焦りは感じられない。自動倉庫の搬送ライン関係で繁忙期に入っていることもあるが、出前教育は営業ではなく「あくまで地域貢献」と考えているからだ。
 坂部社長は「(ロボットは)今のところ金食い虫。でも手応えはあるし、経験として肥やしになっている」と前向きだ。

■検討から稼働まで短く
 大手物流システムメーカー出身の坂部社長が地元である和歌山県で創業後、自動車メーカーの工場進出に合わせて九州に移転した。搬送ラインの設計から立ち上げまで一貫してできるのが強み。システムインテグレータとして本格的に活動したのは15年頃という。
 きっかけは友人の依頼。熱間鍛造工程へのワーク搬送をロボットに置き換えるというものだ。
 「自動化自体は難しくない。高温と粉塵による過酷な環境、変種変量を考慮に入れたうえで、メンテナンスしやすく、なおかつ安くする。そうなると実に厄介だった」と坂部社長は振り返る。
 粉塵対策としてロボット全体をフィルムで包み、サイズに大きな変更がないワークごとに生産計画を組み直すことで、カメラを使わず変種変量に対応した。その経験を通じて、坂部社長は「担い手が少なくなっている中小企業こそロボットを扱えるようにするべきでは」との思いに至ったという。
 「治具や切削工具は自分で作れるのに、ロボットになれば心理的なハードルが高くなる。それだけシステムインテグレータの専門知識が高いということだが、頼りっきりでは需要に対して供給が追い付かない」
 そこで力を入れているのが、用途を絞ってロボット一式を低価格で導入できるコンセプト提案だ。ロボット、ハンド、カメラなどをまとめて提供することで、検討から納品、稼働までの期間を縮める狙いだ。ホームページには製品のスペックだけでなく、価格も細かく載せている。
 「モノを売りたいわけではない。『すぐにほしい』との声に応えるためだ。ロボットの導入台数が増えれば、地域の話題になるし、先進的なところにヒトが集まる。操作できるヒトを増やすことも、システムインテグレータの役割ではないか」と、坂部社長は教育に力を入れる思いを語った。

(写真=ショールーム、トレーニングルームとして位置付けている「ロボットセンター小倉」)