連載

2020年9月10日号

三明機工、デジタル化で設計負荷軽減が加速

ユーザー目線の検証、VRを活用

 200インチの大画面液晶モニターの前で、数人の技術者が熱の入った議論を交わす。画面に映し出されているのは、ほぼ実物大のロボットシステムの3D映像。FAシミュレーターを使って、ロボットやコンベヤの動きをあらゆる角度から確かめながら、「ここのサイクルタイムはもうちょっと、早くできるんじゃないか」、「干渉は無いけれど、この狭さじゃあ、扉が開きにくい。メンテもやりにくいだろうね」。多人数で一気に意見出しして最善策を導き出す様子は、まるでチーム医療の現場のようだった。
 ロボットSIerの三明機工(静岡市清水区)が昨年12月にオープンした「バーチャルロボットソリューションセンター(VRSC)」での一幕だ。
 「ほぼ実物大のバーチャル画面は、技術者のアイデアを刺激する仕掛け。従来の2D図面や社内共通のチェックリストだけでは見逃しやすい部分を、発見しやすくなる。構想段階からシステムの完成度を上げられ、組み立て後に設計に後戻りするムダを最小限にできます」。技術本部開発チームの西田真幸部長は、前工程で品質を作りこむ「フロントローディング」がバーチャル技術で加速すると言う。
 VRゴーグルを装着すれば、目の前に実物大のロボットシステムも出現する。ロボットに馴染みの薄いユーザーでも直感的に理解しやすいのがメリットで、ユーザーを交えた設計検証に用いることも多いそうだ。
 「実際の作業姿勢で、扉や通路のスペースなど使いにくい部分の有無を細部まで指摘してもらえるのが良い部分。装置完成後ではもう、変更できない場合も多いですからね。早い段階で不具合が分かれば、ユーザーの満足度を高められる上、ムダな後戻りも減らせる。数件実施した手応えでは、実機立上げまでの時間を半分以下に縮められるとみています」(西田部長)。

■DX推進、業界を先導
 VRSC発のソリューションは今後、蓄積データを活用してコンサル能力をレベルアップさせつつ、先端技術の数々を加えて数段の進化を遂げる計画にある。久保田和雄社長は「現場とサイバー空間が同期して動く『デジタルツイン』の環境を整え、まずは設備立上げ、改善業務を効率化したい」と目を輝かせる。
 ユーザーの現場とVRSCをリアルタイムにつなぎ、ロボットやPLCのデバックを効率化する構想も。さらにAIを活用した設計フロントローディングのプラットフォーム開発にも、大学と民間数社の連携で挑もうとしている。具体的には、ユーザーのヒアリングをもとに技術者が描いたポンチ絵(設計図)から、AIがユーザーの要求仕様の詳細を判断し、2D図を介さず、ダイレクトかつ瞬時に3Dシミュレーション画面を創り出せるシステムを想定しているのだとか。プラットフォームは、久保田社長が会長を務めるFA・ロボットシステムインテグレータ協会でも活用を広めていきたいと言う。
 「AIで設計のフロントローディング化を加速できれば、業界共通の悩みである設計人材の不足を解消しつつ、提案を高度化できるでしょう。不確実性がますます高まる今、デジタル革新なくしてユーザーの要求は満たせない」。コロナ禍を経てますます高まる自動化ニーズにどう応えるか。久保田社長は業界の未来を見据える。

(写真=バーチャルロボットソリューションセンターでのVRデモ)