識者の目

コロナ禍後のニュー・ノーマルを共に考えよう

菅新内閣への期待とデジタル化推進について

 8月28日の安倍首相辞任表明から政局が騒がしくなったが、9月14日の自民党総裁選で菅義偉氏が圧勝、16日には菅義偉第99代内閣総理大臣が誕生して、新内閣閣僚指名がされ、ポスト安倍体制が本格的に動き始める。何が引き継がれ、何が改革されていくのかに、注目して行かねばならない。その前に、衆議院解散が近々あるのではという憶測もある。コロナ収束予測、米国大統領選予測、中国経済復興予測等、企業はいろいろな難しい予測をしながら、先行した対策を講じて行かねば生き残れない。重要課題への動きを現時点で予測することは困難であることを承知の上で、菅新内閣での取り組みへの期待も含め、予測を行ってみたい(したがって、保証はできない)。
 コロナ対策と経済活動対策とのバランスにおいては、菅政権の方が経済活動により重きを置いた施策を行っていくと思われる。西村康稔経済再生担当大臣が留任し、コロナ対策担当も留任とあるが、コロナ対策については、田村憲久新厚生労働大臣に前面に出てきてもらいたいと思う。経済再生についても、梶山弘志経済産業大臣に前面に出てきてもらいたい。
 米中覇権争いに対しては、これまでどおり中国に配慮をしながらも、米国に軸足を置いていくと思われる。もちろん、11月の米国大統領選挙の結果で再考が必要となる。菅新首相は外交に弱いと言われるが、米国の実務部隊とのネットワークは強い。
欧州の中国離れが起こり始めている中で、中国はASEANへの働きかけにより力を入れ始めている。ASEANでの日本の立場を、中国のしたたかな戦略で奪われないようにしなければならない。キーとなる国はミャンマーとベトナムである。この両国をしっかり日本側につけておかねばならない。菅政権では、官邸における主導力が今井尚哉補佐官から和泉洋人補佐官に移る。この和泉補佐官がASEANとの関係のキーパーソンになる。
 菅政権での新しい取り組みが、デジタル庁の新設である。担当大臣には平井卓也氏がなった。またデジタル化推進では、武田良太総務大臣の働きも重要である。Withコロナで着実に変わってきたのが、テレワークとWEB会議、WEBセミナーへの移行である。企業は、この変化に対応できないと生き残りが難しい。中小企業は、デジタル庁が進めてくる政策を活用しながら、この際に業務のデジタル化、セキュリティ対策を進めておかねばならない。
 さて、コロナ禍での全国への緊急事態宣言(4月16日)から5カ月が経過した。着実に変化してきたのが、公共の場や店舗でのマスク着用、ソーシャルディスタンスの確保である。マスクの入手が困難となった騒動も落ち着き、最近では各自の手作りマスクやファッション重視のマスクが増え、立体的マウスシールドやフェースシールドの着用も目立ってきている。店舗での行列位置の指定や、ビニールシートやアクリル板による仕切り設置も当たり前になってきた。これらの使い勝手の改良も進んでおり、ものづくりノウハウを活かしたビジネス展開も可能となってきた。
 コロナ感染対策のため、訪問来社お断り企業や、社員の出張を控える企業もまだあるが、この緩和も急速に進んでいくと思われる。一方で、セミナーや会議はWEBで行うのが定着し、参加者も慣れてきた。デジタル化が遅れていると言われてきた日本にとって、コロナ禍はそれに気づかされる良いきっかけとなったのは間違いない。
 デジタル化は企業内業務での推進だけでなく、新しいビジネスでの活用も重要で、ものづくり分野でも興味深い事例が出始めている。下図に紹介するmeviyはミスミグループ本社開発のサービスで、ブラウザに板金部品や金型用部品の設計データをアップロードするだけで、AIが価格と納期を即時回答、加工から出荷までを最短即日で実現する、製造業における部品調達の革新的なサービスである。詳細な紹介は次回にしたい。

オフィスまえかわ  代表 前川 佳徳

大阪府立産業技術研究所研究員、大阪産業大学デザイン工学部教授を経て、ものづくり企業支援を手掛ける「オフィス・まえかわ」を創業。製造業のアジア展開支援に力を入れている。型技術協会の元会長で現・名誉会員