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便利な作業工具

―今号(10月25日号)の紙面特集より、便利な作業工具を掲載―。
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 機械化や自動化が指向される一方、個々で見れば手作業が必要な現場はまだまだ多い。「働き方改革の実現」という点では、むしろ感覚と経験が重視される身近な作業工具こそ、見直すべきツールといえる。機能集約で持ち替えや持ち運びの手間を減らす、手になじみやすい素材で疲れにくくする、コンパクトなフォルムで奥まったところへ無理なく入れるなど、想定される作業シーンも織り交ぜ、従来品との差異化要素を探った。

機能集約で負担軽く、1丁であらゆる場所へ

 作業工具の機能集約が進む。持ち替える手間がなくなり、移動時や保管・管理の負担も軽くなる。ワイドモンキレンチもそういったニーズを反映して定番化した製品の一つだ。
 口開きを大きくすることで、1丁で対応できるナットサイズを多くする。「大は小を兼ねる」発想だが、欠点もある。開きを調整するウォームの操作性だ。
 スーパーツールの林輝樹課長(技術開発部)は「もう少し大きければとの声に応えた結果、『超ワイド』と言われるほど口開きがどんどん大きくなり、下あごの移動距離も長くなっていった」と振り返る。そこで今年8月に発売した「クイックワイドモンキレンチ」は、ウォームを下に引くことで素早い口開き調整を可能にした。
 「ラックとウォームのかみ合わせを外す」(林課長)という独自の早送り機構を採用。モンキレンチでこういった機構を採用するのは初めてだそうで、特許申請も完了している。
 ラインナップは、最大口開き38㍉、50㍉、60㍉の3種類。「価格はワイドモンキレンチに比べて1~2割高く設定した。動きで良さが分かる製品なので、チラシと動画を組み合わせた新しい販促ツールを使いYouTubeで近日公開する予定」という。
 ヘッドを替えることで様々な作業環境と用途に対応する。TONEが「変身」と謳ってアピールしているのは差替式トルクレンチ。使用目的に合わせて交換することでトルク管理がしやすくなるだけでなく、ソケットが使えない狭い場所でも効果を発揮する。
 トルク設定は、直接数値が読み取れるメカニカル機構のデジタル表示値を採用。主目盛、副目盛を読み取る必要がないため、設定ミスの防止、締付トルクの確認・管理をしやすくした。設定したトルク値に達したら「カチッ」という音、手に軽いショックで知らせる。
 ヘッドは、ラチェットめがね、クイックスパナ、首振ラチェットを用意した。なかでも、高さが低く、狭いところに向くクイックスパナヘッドは、ボルト・ナットに素早くアクセスできる点が受けている。4点の面で接触し、確実にボルト・ナットを保持するというもの。スパナ部の一部がスライドすることで、抜き差しせずに連続作業が可能だ。
 ヘッドの特注にも対応しているが、ユーザーのなかには「自前でヘッドを用意する」(営業企画部)ケースもあるという。通常の工具で、差替式トルクレンチ用のヘッドが使える変換アダプターも製品化している。

■Bluetooth活用
 東日製作所が提案を強めているのは、読み取り誤差のないデジタル型トルクレンチ「CEM3︱BTシリーズ」。なかでも生産工場の締付作業向けに開発した「CEM3-BTD」、検査作業に向く「CEM3-BTS」はBluetoothモジュールを内蔵。無線でデータ転送できる点を差別化要素に挙げる。
 BTDモデルは、無線で判定トルクの設定を可能にしたことで、複数の単直形トルクレンチを1本に集約。測定したデータは「都度外部機器へ無線転送できる」(営業推進グループ)という。一方のBTSモデルは測定データを記録し、一括で外部機器に無線転送ができるのが売りだ。
 締付データ管理システム「TDMS/TDMSHT」も使うと、導入した日から、データ記入作業の省力化、記入ミスの防止に加えて、「エビデンスとしての締付データ管理が行える」としている。締付・検査データの履歴を残せることで、ユーザーからは「リコールなどのリスク管理に最適」との評価を得ているそうだ。

素材の力、耐久性と安全性

 作業工具は、人の力が作用して役割を発揮する。繰り返し動かせば疲れるし、力の入れ方次第で身体への負担も大きくなる。そういった課題を解決するために、少ない力で長時間の連続作業が可能な製品が注目されている。
 前田シェルサービスの「コンポータンハンマー」は、名古屋市立大学芸術工学研究科と共同開発し、持ち手形状の改良により疲労度を同社従来比で最大30%軽減した。打撃面の形状も工夫することでスイートスポットを外しにくくしている。
 ヘッドが抜けたり、柄が折れたりしない一体成形工具。火花が発生せず、破砕もしない特殊ウレタンを採用した。ヘッド内部に埋め込まれた特殊素材が打撃時に移動することで、反動を抑えてショックを和らげるのも特長だ。
 指の位置に合わせてグリップの凹凸を変更。使いやすさと疲労軽減を図った。高い耐久性と適度な硬度で傷付きにくく、打撃音も静か。プラスチックハンマーに比べて長寿命なのも売りだ。全長560㍉㍍以上のハンマーは、ヘッド上部が平らなため倒れない構造になっている。
 営業企画課の野田忠史課長によれば、周辺環境への配慮や安全性の点からも引き合いが出ているとして、「金属ハンマーの打撃音が気になる住宅地近郊の工場でも、コンポータンハンマーなら音を大分抑えられる。それにハンマーは重くて衝撃も大きいので腱鞘炎になりやすいので、若い方を中心にショックレスが喜ばれている」と話していた。
 六角レンチにも焦点を当てたい。六角穴ネジに挿入し、垂直に立てて回す工具で、メンテナンス、治具の組立、機器の整備などに使われる。操作が限定されるため、先端を丸くして挿入しやすくした「ボールポイント」が発明されたものの、少し傾けて早回しができるようになった分、先端で折れるというデメリットが出てきた。
 そういった経緯を踏まえて、ベッセルが昨年2月に発売したのが「本締めボールポイントレンチ」だ。「本締め」と名付けたのは、ボールポイント部でも最後まで締付できる耐久性があるという自信の表れ。「実際に根拠となるデータでは、ハイテンションボルトの締付トルクに対して約2倍のトルクに耐えられる設計」(企画開発部)で、永久保証も掲げているほどだ。
 ボールポイントの形状は、ボール部が底あたりする形状ではなく、傾きによって駆動する部分が移動するようになっており、最大38度まで傾く。もう一つの特長がオリジナルの鋼材「EX合金鋼」を採用したこと。産業・建築用ビットに使われている鋼材を使用し、「自社内で徹底した品質管理のもと、性能が最大限出るように熱処理を行っている」という。
 短軸側が短いタイプは「ショート」「スタンダード」「ロング」の全30アイテム。そのほかにも、短軸側が標準のタイプは全34アイテム、インチサイズ10アイテムなどを取り揃えている。

■感染症防止も
 工場における感染症対策で留意すべきは共有の機器類。シフト制などで複数の作業者が一つの機器を使う場合も多く、企業には適切な消毒や使用者の把握が求められる。
 フジ矢が開発した「抗菌シリーズ」は、グリップの材料に抗菌剤を混ぜることでグリップ表面の細菌の増殖を抑えた(殺菌・滅菌ではない)。「新型コロナウイルスの影響で衛生意識が高まっている工場などでの作業に最適」という。
 抗菌剤はまな板や三角コーナーですでに実績のあるものを採用。「剥がれる懸念のあるコーティングと違い、材料に直接抗菌剤を混ぜているので効果が長期間持続する」としている。
 ペンチ、スタンダードニッパ、強力ニッパ、プラスチックニッパ、ミニテックスモールニッパ、ラジオペンチなど9種類をラインナップ。フジ矢も「反響次第ではさらなる展開も考えたい」と前向きな姿勢を示している。

ニッチな作業の必需品、ピンや配管に着目

 「ちょくちょく注文がある」。そうオーエッチ工業の岡本元人氏(開発課)が紹介してくれたのは「ショートスライドハンマー」。金型や工作機械に使われる「ピン」の引き抜きに使用する。ピンは少ない誤差ではめあわせるための必需品で、テーパーやストレートなどがある。
 この工具は、ネジ穴のあるイレコ、シャフトにも対応できることから、プレス・樹脂金型のメンテナンス、機械修理などの用途で引き合いが続いているそうだ。
 ハンマー、シャフト、変換アダプター、深穴用延長ネジを組み合わせて使用する。使い方は、引き抜く部品のネジ穴にアダプターをセットした後、ハンマーを通したシャフトの先端をアダプターに取り付けるだけ。岡本氏によれば「シャフト後部へハンマーを打ち付けて引き抜くイメージ」という、
 ネジはM4~M10までの5サイズに対応。最短185㍉㍍のショートストロークに設計することで、プレス機や成形機にセットしたまま使えるようにした。
 岡本氏は、「プレス・順送金型のメンテナンスには、部品位置決め用のピンが必ず使われている。しかし、引き抜きツールを自前で作っているケースがほとんど。標準価格を1万円台に抑えたことで従来品よりも手に取っていただけるはず。最近では、シャフト、変換アダプター、延長ネジの売れ行きが良い。削ったり、溶接したりして、奥まった場所へ対応できるカスタマイズのしやすさが受けている」と話していた。
 配管工事に特化したのはMCCコーポーレーションの内径レンチ「IPW」シリーズ。折れた管が楽に抜ける配管リフォーム必携の工具だ。
 活躍する場面は止水栓が錆びてネジ部分が途中で折れたとき。折れ残ったネジ部分に内径レンチを挿入し、あとはレンチの六角部分をスパナでまわすだけで取れる。なお、折れた止水管が壁の中に残ってしまうと壁を壊すなどの大がかりな工事が必要になる。
 手でレンチを少し回すと、ネジの内側から固定できるロック機構。細かい歯車のような先端表面が、管にしっかり喰い込む仕組みだ。
 使用できる管は、白管、給水管、装飾用クロムニップルなど。「IPW-1520」は、レンチ片方ずつに15Aと20A呼び寸法を備えている。「短ニップルの締め・緩めなど、通常の外側からくわえるパイプレンチでは使えない場面でも有効」とする。

新たなブランド確立へ、伝える「日本品質」

 エビ印のモンキレンチでお馴染みのロブテックスが新たな製品ブランドの確立に力を入れている。2019年に発売した「J-CRAFT」シリーズで伝えたいのは「信頼の日本品質」。カタログにそのフレーズを大きく使用する一方、パッケージの表面には「MADE IN JAPAN」のロゴを載せた。
 ラジオペンチやプラスチックニッパーなど、サイズ展開も含めて35種類をラインナップ。作業工具の原点と言える「つかむ」「曲げる」「切る」などの基本性能を高めた。高い精度と強靭さ、鋭い切れ味など、全体に共通する数々の魅力を分かりやすい一言でまとめようと検討した結果、「信頼の日本品質」に決まったという。
 担当者は「イメージを浸透させるためにシリーズ化した。プロ、アマチュアともに満足いただける工具。商品化にあたって、まずオーソドックスなタイプから売り出した後、段階的に増やしていく方向性でスタートした。これから付加価値を加えた製品も順次追加する」と話す。
 今年3月、パワーシリーズとして、ペンチ、ニッパー、ニッパー薄刃から各2サイズ(計6種類)を発売した。偏芯テコの原理を利用することで、コンパクトなフォルムながら太い線が切れるのが特徴。グリップはエラストマー樹脂で握りやすくし、さらに横幅を小さくすることで疲れにくくした。握り部の形状やサイズも「検討を重ねたうえで決定した」と自信を見せる。