PICK UP 今号の企画

工作機械技術トレンド

―今号(11月10日号)の紙面特集より、工作機械技術トレンドを掲載―。
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ヤマザキマザック「MA(MILL ASSIST)シリーズ」

 ハードよりもソフト面がクローズアップされるようになった工作機械。DX(デジタルトランスフォーメーション)、AI、IoTなどを利用すると謳う製品はもはや少なくない。それらによって自動化がいっそう進み、周辺機器との融合を強く意図した5軸加工機も現れた。

DX、5G活用と協業でさらに加速する製造業DX

 コロナ禍を受け、製造業にデジタル変革の大きな波が押し寄せるなか、工作機械各社も相次いでDXに対する取り組みを強化している。
 「現状を追い風に顧客のDX化がものすごいスピードで進んでいる」。こう語るのはDMG森精機の森雅彦社長。同社もNTTコミュニケーションズとAGVの遠隔操作などを行う共同実験や、KDDIとデジタルファクトリーの実現に向けた5G環境の構築を行っている。また2022年に竣工予定の「奈良商品開発センタ」において、DX構築と先進技術の開発を進めていく構えだ。
 ファナックは9月、自社製品情報をデジタルコンテンツとともに提供するWEBサイト「ファナックDXCE」を開設。以前から取り組むDX活動の一環として、製品とユーザーをオンラインで繋げる。また、11月には富士通、NTTコミュニケ―ションズと新会社「DUCNET」を設立。工作機械業界のDXを支援するクラウドサービスを提供するなど、顧客のデジタルモノづくり推進をバックアップしていく。
 ロボット、FMSを活用し72時間無人稼働を可能にした自社工場「ドリームサイト3」等でDX推進の「お手本」を見せているのがオークマだ。同社は日立製作所とIoTを活用した高効率生産システムを、PTCジャパンとCADやPLMの構築プロジェクトを行うなど、モノづくりプロセスの革新に積極的に取り組んでいる。
 工作機械の自動化を実現するCNC装置「Arumatik-Mi」や、AIがCADデータをもとに自動運転を行う「Auto-Part-Producer」など、革新的な技術を送り出すキタムラ機械は、世界初の「顔認証システム」機能を今展に出品。中小製造業が導入しやすいDXを提案している。

自動化、ロボット活用を専門スキルレスで

 より早く、ストレス無くロボットとリンクする―。工作機械周りの自動化システムは、専門スキル不要の流れが加速している。
 ヤマザキマザックの「MA(MILL ASSIST)シリーズ」は煩雑なロボットティーチング不要で、ワーク搬出入を多関節ロボットで自動化できるシステムだ。「1加工品あたり、5~10分程度のプログラム入力で段取りが完了する」(同社)。
 オークマの次世代ロボットシステム「ARMROID」も導入に専門SⅠerが不要で操作が簡単。CNC操作盤で始点と終点をクリックするだけで、アームが干渉を避けて自律的に動く。加工機内部に多関節ロボットをビルトインできるシステムで、ワーク着脱のみならず、びびりの抑制、切削液・エアブローによる切粉の絡まり防止、切粉掃除など1台のロボットが様々な作業をサポートする。
 三井ハイテックではワーク搬送用ロボットを機内に搭載した小型多機能研削盤「HPR-PCNCF-R'」を提案する。機械を連結配置でき、研削のみならず計測など多種の工程を全自動化したラインの構築が可能だ。
 一方、量産ラインで重宝されるガントリーローダーは高速化競争がさらに進む。中村留精密工業の複合加工機「GR210 High-Speed」のガントリーローダーはクラス最速(ワーク10キロで搬送タイム約6秒)。最大20キロの重量ワークに対応でき、洗浄や品質管理などのユニットも選択できる。
 また、自動化の障害になりやすい切りくずの問題に焦点を当てたのは、DMG森精機。新開発の「AIチップリムーバル」は撮像からAIが切りくず堆積状況を分析し、クーラントノズルの角度を自動調整して洗浄する。

5軸・複合加工、無人加工狙う5軸・複合、小型・平面化も

 従来からの人手不足や生産性向上を直接的に解決する5軸・複合加工が、ハイスペック標準化・省スペース・高ミーリング剛性・加工領域拡大などの点で付加価値を増している。ヤマザキマザックの同時5軸制御複合加工機「INTEGREX i-Hシリーズ」は機械前面の凹凸が極端に少ない。自動化システムや周辺機器との省スペースな接続を可能にするためだ。「ATCマガジンには前面からも背面からもアクセスできるので、レイアウトが工具の段取りによって制限されることがなく、自由なシステム構築が可能」と言う。
 オールインワンモデルと謳う松浦機械製作所の5軸立形マシニングセンタ(MC)「MAM72-52V」は「最初から長時間・無人運転を狙った」。マトリクス工具マガジン(130本)、タワーパレットシステム(PC15)、切屑処理システムを標準搭載。始めからハイスペック仕様としたことで価格は税別7790万円に抑え、多面パレットを用いずロボットを使いたい客用のオプションの方がむしろ安価だ(1面仕様約6500万円)。
 ダウンサイジングもいっそう進む。世界最小の、公衆電話ブーススペースというのはキタムラ機械の医療機器部品加工などを狙った5軸MC「MedCenter5AX」(機械幅1.2×奥行き2m)。それでいて主軸最高回転毎分3万回転、40本の工具収納で50㍉径の工具が使える本格仕様だ。三井精機工業が「最小の設置スペースで最大の加工エリア」としてきた5軸MCシリーズの新型「Vertex55XⅢ」(最大積載径750×高さ525㍉)は、主軸熱変位補正の搭載でZ軸の熱変位量を従来の3分の1に改善した。