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和歌山大「パワーアシストスーツ」歩行から中腰、持ち上げまでサポート

16年度、農業向けに投入へ

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 農作業の身体的負担を軽減する和歌山大学の「パワーアシストスーツ」が、16年度にも市場投入される。腰椎と股関節にサポート部分を絞り込むことで軽量化(本体重量7キロ)に成功。上から雨合羽を着ても自然に動けるようにした。 装着すれば、収穫物満載の重さ20~30キロのコンテナも、電動モータの力で最大10キロ分をアシストしてくれる。手袋の中に貼り付けたスイッチが反応して、モータのトルクが働く仕組み。前傾から直立の状態まで、自動的に上半身を起こしてくれる感じだ。
 最大の特長は、持ち上げだけでなく、歩いたり、中腰で収穫したりするときもサポートしてくれること。産学連携・研究支援センターの八木栄一特任教授は、「農作業はゆっくりやっているように思われがちだが、収穫時期が限られているので女性や高齢者もスピーディーにこなさなければならない」農業特有の現状を話す。
 靴の中敷にある爪先と踵部分にフットスイッチ、両脚の電動モータに股関節の角度を検知するセンサーを内蔵。歩幅やスピードに応じてトルクが調節されるので、高齢者も無理なく歩ける。過剰な反応による事故を防ぐため、あくまでアシストしてくれるのは前に向かって歩いているとき。後ろ歩き、横歩きは、動作パターンに入っていない。
 歩行から持ち上げの動作に移るとき、スーツの切り替え設定は不要。中腰で作業する場合にのみ、どの角度で姿勢を維持したいかコントローラ(開発中)で入力する必要がある。ちなみに手袋のスイッチを押せば、持ち上げのときと同じように上半身を起こしてくれるので「無理なく下から上への連続作業が可能」だ。
 フル充電時の連続作業時間は約2時間。「予備バッテリーも同時に購入していただき、付け替え後は使い終わったものをシガーソケットなどで充電できるような形を考えている」(八木教授)という。
 和歌山県内のみかん農家や果樹園で複数回行った試験では、前かごを使った収穫作業、一輪車による運搬、軽トラックへの積み込み、坂道への歩行などで効果があることが実証された。  
 本格的な市場投入に向けて、15年度には全国10カ所で100着の導入実証試験を開始する予定。前出の10キロ分アシストするタイプをベースに、園芸農業機械メーカーのニッカリ(岡山市中区)が製造とメンテナンスを担当する。
 八木教授は、農業に限らず、運搬、建設、介護などで腰痛に悩む人が「国内だけで1000万人以上いる」と推測する。使用者が作業内容に合わせて、手足にあるスイッチの位置を変えたり、加速時間やモータのトルク比率を変更したりと、すでにある程度の自由度を持たせていることから、八木教授は「近い将来、物流、製造、介護業界にも使っていただけるようになるはず」と見ている。