オヤジの喜怒哀愁

2015年3月10日号

オカユリコ

3428

 最近はメールに押され気味とはいえ、電話はやはり便利だ。混み入った要件をパソコンやスマホに打ち込むのは面倒なものである。電話なら受話器越しに話せばそれでいい。相手が電話に出ればだいたいその場で用事が済むので話は早い。メールや手紙のように返事を待たなくていい。
 だが、電話だとどうしても聞き間違いが発生する。電話でメアドを聞くときなど大変である。BなのかDなのかわかなない。EなのかGなのかわからない。AなのかJなのかKなのか、MなのかNなのか、非常に紛らわしい。これは電話の弱点である。
 同じ問題が発生する無線通信の世界では、アルファベットを代表する単語が世界的に標準化されていて、聞き間違いを防いでいる。
 たとえばJLSUならジュリエット・リマ・シアラー・ユニフォームといえば通じる。ユニフォームをアンクルと言い換えたりすることもあるが、こうした約束事が無線通信の世界ではアマチュア無線同士から、空港管制官と飛行機パイロットとのやりとりに至るまで共有されている。
 隣の家でアマチュア無線をやっているお兄さんから、墜落した飛行機のブラックボックスの中の通信記録まで「ジュリエット・リマ…」といっているのだからこれはすごいことである。
 電話で住所氏名を伝えるときなどは漢字でも苦労する。
 「オカユリコさんはどういう字を書きますか」
 「キューリョーのキューに…」。ここで「丘陵」がすぐに浮かべばいいが「旧領」「給料」「九両」など日本語はやっかいだ。「ジユーのユーに、リエキのリに…」などというのも電話だと意外と負荷が伴うものである。
 「オカミツコのオカにユリトオルのユリです」
 これは一発で「丘由利子」だとわかる。わかる人にはわかる。ただし、丘みつ子、由利徹は世代間ギャップが相当あるので、アマチュアからパイロットまでという普遍性を獲得するまでには至っていないのが残念な点である。使う時には一応相手の年齢をよく考えてから使いたい。しかし、一発で伝わったときには 、都会の雑踏で偶然旧知の同級生に出会ったような懐かしさがこみ上げてくるはずである。