連載

2015年4月10日号

先端技術、マーケットインで追求

ナノ精度の量産、無人化も目標に
ナルックス[プラスチック光学部品・金型 設計・製造]
大阪府三島郡

 緑豊かな天王山の麓。サントリーのウイスキー蒸留所で知られる山崎の地に、世界有数のプラスチック光学部品メーカー「ナルックス」(1930年創業、従業員数279人)がある。
 すばる光学望遠鏡に採用された「マイクロレンズアレイ」をはじめとする超精密光学部品から、カメラレンズ、レーザービームプリンター用の自由曲面レンズ、光ディスク装置用の回折格子まで守備範囲は幅広く、光学設計・製品設計・金型設計・製造から量産、評価までを一気通貫でやってのける。
 しかも、「世界初」の技術をこれほど多く持つ中小は、そうそうないだろう。
 電子線描画技術の確立や成形時の複屈折を予測できるプログラムの開発、原子間力顕微鏡の採用などにより、主力の回折格子では深さ精度2ナノm、ピッチ10ナノmの微細な凹凸パターンでの量産を世界で初めて実現した。北川清一郎社長は「成形法が確立した今は、ナノm以上の形状精度でも量産が可能」と、技術の進化に自信をみせる。
 その同社も、つい数年前までは景気の悪化と台湾メーカーの台頭で、黒字を維持しつつもかなり厳しい経営状態に追い込まれた。目に見えて好転した最大の要因は、社長が「技術者を『たこつぼ』から引き上げた」と表現する、6年前の組織改革に遡るようだ。

 自動車部品や産業機器などビジネスを中心にした横組織が、研究、製造、営業などの従来の縦組織を横串で貫くマトリックス構造に組織体制を変革させ、他部門の仕事や収益構造への理解が深まった。
 北川社長は「技術者の目標が、技術の達成ではなく、ビジネスの達成へと確かに変わってきている。常にマーケット動向を見据え、パテント戦略も踏まえながら開発に臨めるようになった」と、変革の手ごたえを話す。

スマート工場実現へ
 量産工程でもマーケット志向を貫く。
 山崎工場4階のDVD/CD向け回折格子の生産ライン。射出成形機の横に備えられた自社開発の自動化装置は、型締め後の端材処理や簡易検査のほか、多数個取りの金型からキャビティ別に部品を振り分けて箱詰めできるのが特徴だ。
 製造統括部の井田毅部長によると、キャビティ別の分類は、トレーサビリティに敏感な国内の自動車関連の顧客ニーズに対応したもの。「部品公差の偏り具合はキャビティ別に違うため、出荷前に分別しておけば顧客側の組立時の調整がしやすくなる」という。
 こうした自動化装置は各部品の量産決定と同時に、すべて自社で設計・製造し、生産効率を最大限に高めている。すでに山崎本社工場の自動化率は94%にまで向上しており、主力のfθレンズの生産工程では必要な人員が3分の1以下に減った。
 全工場のITネットワーク統一も検討しており、さらに効率的な生産を可能にする「スマート工場」の構想も見え始めている。
 「今は品目別に専用機で生産しているが、理想は治具を自動で素早く段取り替えして多種の製品をフレキシブルに生産できるライン。ただ、現状ではメーカーごとにロボットや機械の信号が異なり、共通化した独自プログラムを組みにくい。このあたり、インダストリー4・0を合言葉にして通信規格統一に動くドイツと、閉鎖的な日本との違いを歯がゆく思う」(井田部長)。
 部品精度を担保するのは、「6割が金型技術、4割が製造技術」とも。「日々刻々と変化する機械や金型の状態を見極め、適切にメンテし続けられる製造技術は、そう易々と海外に移転できるものではない」(同)。自社の技術継承を確かに進めつつ、海外競合を引き離す。
 同社では現在、高機能LEDランプやヘッドアップディスプレイなど自動車関連分野の開拓が進展中。北川社長は「従来部品より一歩進んだ光学レンズの新特許出願も実現が間近。自動車関連を今後の大きな成長軸に据えるとともに、画像処理プログラムの開発で目視検査に頼ってきた部分を自動化し、5年後には一部無人化工場の実現を目指す」と、近未来の展望を話した。
(写真=カラーレーザープリンターなどに用いる自由曲面光学レンズ「fθレンズ」。4色の走査線を10マイクロm以下の精度で位置合わせでき、それまで数点のレンズで担っていた役割を1枚で済ませられるようになった)