オヤジの喜怒哀愁

2015年4月25日号

筍梅雨

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 雨の多い春になっている。新社会人として、あるいは新入生として新しい生活が始まってひと月足らず。なかなか調子に乗れずにいるフレッシュマンも多いのではなかろうか。野外での研修やオリエンテーションの日程が思うように消化できないところもあるだろう。こう雨が多くては外作業は仕事にならないだろう。つかの間の晴れ間、裏山に入っていくと筍が出ていた。「雨後の筍」とはよくいったものである。孟宗竹の筍が出る季節なの だ。春の食材は、ふきのとうにしてもたらの芽にしてもそろそろかなと思ったら毎日観察していないと摘みどきを逃してしまう。筍もそうで、あっという間に背が伸びて竹になってしまう。
 筍は、昼も夜も成長を続け1日に1m以上伸びることもあるそうだ。まだ小さいと思って目印に帽子を置いておいたら次の日には帽子が取れなくなって いたなどという話もある。なので、筍を取る時は気ぜわしいのだが、取ってから食べるまでも気ぜわしい。
 収穫期がピンポイントであることのほかに春の食材にもうひとつ共通するのが苦み、えぐみである。もちろん、これがあるからなんともいえずおいしいのだが、春の食材の苦み、えぐみは強烈なものなので度が過ぎるとオエッとなる。摘みどきを選び、取ったらさっさと食べないとせっかくの旬の味が台無しだ。
 筍は切断直後から急激にえぐみを増し、時間がたてばたつほどえぐみが強くなる。と同時に固くなっていく。そこで、取ったらできるだけ早く食べてしまうか、下ごしらえを施すことが肝要になる。取ったらすぐに糠や、米の研ぎ汁でアク抜きをしなければならない。筍を食べようと思うなら、取ってから食べるまでとにかく筍が最優先事項となる。
 筍はピンポイントの旬の食材なので、古くから時季を知る自然暦としての役目も負ってきた。船乗りは、このころ南東から吹いて雨を降らせる風のことを「筍梅雨」と呼び、またこのころ取れるメバルは「筍目張」と呼ばれ美味という。筍はまさに春の季語と呼ぶにふさわしい。