連載

2015年4月25日号

切削・放電・研削を巧みに使い分け

目指すは脱「金型屋」
坂井精機[精密金型加工]
新潟市東区

 「金属3Dプリンターにはエンターテインメント性があるね。プリンターを使った金型づくりにもチャレンジしていければいいと思っている」そう言って新しい技術に目を輝かせるのは金型ひと筋60年の坂井精機(1951年創業、従業員40人)の坂井良宏専務取締役。マシニングセンタ(MC)9台、放電加工機(形彫7台、ワイヤ3台)、研削盤(プロファイル2台、ジグ3台)などを保有し、切削・放電・研削を巧みに組み合わせて精密プラスチック金型と粉末冶金金型を設計製造する。粉末冶金金型とは金属粉末(鉄、銅、ニッケル、クロムなど)を入れて圧縮し、高温で焼結して部品をつくるための型。粉末からできる金属素材は切削法とちがい、無駄が少なくエネルギー効率がいいのが特長だ。
 製造する金型はいずれも指先から両手に載るサイズが中心で、月に15個ほどを納めるという。納品先は自動車関連が6割ほどを占め、残りは家電と医療向け。金型メーカーとしては会社の規模、経営ともに中堅といえそうだが、チャレンジ精神ももち合わせている。

「直彫り」射程圏内に
 実際に金属3Dプリンターの導入はまだないが、新しい手法を毛嫌いする様子はない。売上の2割ほどを占める自動車エンジン周りの部品など向けの超硬金型の高能率加工ではさまざま模索している。ワイヤ放電加工では新潟大学(工学部機械システム工学科の田村武夫准教授)と連携し、同大が特許をもつSIカット(Surface Integrity cut)の利用を検討してきた。ワイヤ放電による加工表面にはマイクロクラックが入るのが泣き所。それをSIカットによる仕上げで取り除くのが狙い。ワイヤとワークが放電しないぎりぎりの距離と電圧を保つことでクラックを含む厚さ1ミクロン程度の変質層をきれいに剥がすのがその手法だ。
 また超硬金型を切削加工だけで完結させる「直彫り」は若手社員が中心となって取り組もうとしている。設備する高速回転のリニア駆動MCを利用すれば「製造コストは放電や研削より安くなる場合があるだろう。ダイヤモンド工具は高価とはいえ電極をつくらなくて済むし何といっても速い」と坂井専務。とはいえ、そう単純に事は運ばない。「シャープなリブやピンの角は放電の方が精度が出しやすいし、切削の加工目よりも放電の薄層の方が(表面処理装置の)メディアとの相性がいいこともある」からだ。
 適材適所を進めつつ、「『金型屋』になりきる前に新しいことに取り組まねば」と前を見る。

(画像=切削加工で仕上げた超硬金型)