オヤジの喜怒哀愁

2015年5月25日号

コーゼの効能

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 4月に中学に入学した息子がバスケット部に入部した。部活動が正式に決まるころなのである 。背は高くないし、足もそう速くないのでバスケ向きとも思えないのだが、本人がやりたいというのだからそれが一番である。中高とバスケをやっていた兄の影響もあるのだろう。
 筆者は中学のとき野球部だった。入学前から決めていたわけではなかったが、同じ小学校の恐い先輩に誘われたこともあって入部した。それに、何といっても野球が好きだった。巨人V9、ON全盛という40年前の野球黄金時代のことである。近年はほかのスポーツに押され気味で部員確保が大変とも聞くが、それも時代なのだろう。
 ユニホームを着て毎日のように好きな野球をやれるというのは幸せなことだった。しかし、1年生の新入部員といえば球拾いから始まるというのが当たり前である。せいぜいやらせてもらってキャッチボールかトスバッティングくらいだ。
 13歳にして183cm、93kg、打てばホームラン、投げれば130kmという清宮幸太郎くんのようなよほどの大器、即戦力なら別だが、なかなか野球らしい野球はやらせてもらえない。当時は部員数もやたら多かった。試合に出る機会などまったくない。1年生の練習がどうやら野球らしくなってきたのは3年生が引退した夏以降のことだ。1年生はとにかく声を出せ、といわれたものである。野球はまだしなくていいから、とまではいわれなかったが、大体そんな感じで1年生はとにかく声を出せという。
 セリフは「コーゼ、コーゼ」である。元の意味は「しまっていこうぜ」なのだろう。それが「いこうぜ、いこうぜ」となり「コーゼ、コーゼ」に昇華するのである。1年生は何もせずグランドの隅で1列に並んで上級生の練習を見ていることも多かった。そこへ監督がチラリと一瞥をくれようものなら夏の蝉が日の出を見ていっせいに鳴き出すように「コーゼ、コーゼ」と声を出す。しばらくすると飽きて鳴き止んでしまうが、再び監督がチラリと見ればまた「コーゼ、コーゼ」とやる。
 コーゼ、コーゼにはいったいどんな効能があるのだろう。景気づけの甚句のようなものなのだろうか。いまだによくわかっていないが結局、高校までの6年間をコーゼ、コーゼで過ごした。声帯が鍛えられたことだけは間違いないようである。まあ、新入部員の諸君、頑張り給え。