コラム

2014年5月10日号

 群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」がユネスコの諮問機関(イコモス)から世界文化遺産の登録勧告が伝えられてから、約2週間。多くの観光客で賑わっ ているという。6月に正式決定される見通しで、国内では18番目の世界文化遺産となるが、日本産業の近代化に貢献した明治以降の産業遺産では初めてとなる ▼富岡製糸場は1872年、明治政府が日本近代化のため最初に設置した模範器械製糸場。資料によると、江戸末期、外国貿易を始めた当初の最大の輸出品は生 糸だったが、需要の急増に伴い、粗悪品が大量につくられたため、日本の生糸の評判が悪化する問題が発生。このため、明治維新後、産業等の近代化を進め「良 質な生糸」の輸出に注力するため、品質改善と生産性向上、技術指導者育成のため、当時最新のフランス製設備に日本独自の工法を融合した模範工場として建設 されたという▼富岡製糸場は1939年に民営化され、87年に操業を停止、115年の歴史に幕を閉じた。注目したいのは、操業停止から2006年に富岡市 に管理が移管されるまでの18年間、繊維・医薬品事業を展開する片倉工業が「貸さない、売らない、壊さない」との方針を厳守し、保存に努めてきたことだ▼ 国や地域の工業化は、繊維産業から始まるという。グローバル規模での技術革新が進む中、「品質重視・現場改善・人材育成・社会貢献」に地道に取り組む日本 企業の魅力を見直すニュースとなった。