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賃貸でDIY、人気上昇

「団地暮らし」を面白く

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 借主好みに改装できる「DIY型賃貸」がスポットを浴びている。プロに全面的に頼らないので改装費用が安く抑えられ、従来の賃貸にはないカスタマイズの楽しみも魅力。入居率アップの効果が見え始め、貸し手側の注目度も上がってきた。市場を先導するUR都市機構の実例を取材した。
 「DIY型賃貸」の人気は右肩上がりだ。リクルートの不動産流通サイト「SUUMO」賃貸内での「カスタマイズ可・DIY可」物件は、2014年10月時点で4万件と、一年半前のほぼ数百件から大幅に増加した。
 市場で導入が進むのは、借主が費用負担して修繕・模様替えを行い、退去時に原状回復義務を負わない「借主負担DIY型」賃貸借契約。リクルートが行った調査によると、「借主負担DIY型」賃貸は、調査総数(618人)の約半数が利用意向ありと回答するなど、潜在ニーズの高さも分かった。
 国土交通省の調査によると、賃貸用住宅の空き家の数は約429万戸(平成25年度)と、空き家の種類別内訳で最も多い。その有効活用を模索する同省の「個人住宅の賃貸流通の促進に関する調査報告」(今年3月発表)では民間賃貸オーナー・空き家所有者の3~5割がDIY型賃貸に関心を示していることが分かった。課題は、契約・工事・退去時のトラブルを回避する手法。そのモデルケースとされたのが、(独)都市再生機構(UR都市機構)が全国45団地で展開する借主負担DIY型賃貸「DIY住宅」だ。

原状回復が不要に
 千里中央駅(大阪府)からバスで約28分。緑豊かな丘陵地にUR都市機構の大規模集合賃貸住宅「箕面粟生第一・第三団地」(総戸数679戸、建築は昭和54年)がある。ここでは平成24年春から「DIY住宅」を導入した。
 団地内にあるモデルルームの扉を開け、味気なかったDIY前住居との違いに絶句した。和室だった部屋は古材調のクッションフロアが敷かれた洋室になり、押入れはデスクスペースに。ダイニングキッチンは漆喰や塗装した白木、ブリックタイルなどでシャビーシックな風合いに改装され、どの部屋を見ても元の姿がもはや想像できない。
 「これ、いくらで作ったと思います?」―UR都市機構・西日本支社の小正茂樹主査が、タイル張りのカウンターを指さしつつ、こう問いかける。記者の「5万円くらいでしょうか」の答えは大ハズレで、正解は7000円とはるかに安い。材料選定や施工方法に知恵を絞り、モデルルームの全工事費・材料費も25万円程度に抑えた。
 モデルルームを製作したのは、DIYカリスマブロガー「Kume Mari」さん。「塗装前にベニヤ板を張るなどの、これまで原状回復のための下地作りにかかっていた時間と費用を大幅に削減できた」という。

若年世帯の入居が増加
 UR都市機構では、遮音性の確保や水漏れ事故の防止など、DIY工事の内容を細かく規定した手引きを用意。造作・工作した物の「買い取り請求権」を入居者が放棄する条項をDIY承諾申請書に盛り込むなど、退去時のトラブルを防ぐようにした。全面改装可能な「DIY住宅」には入居前の3カ月間はプランニング・施工期間として家賃が無料になる特典、表面改装のみ可能な「Petit DIY」には工事補助費として約3万円の金券を支給する特典も設けた。
 退去時にはUR側に、造作物・工作物が次の入居時にも使用できるかどうかを細かくチェックする手間が増えたが、「事前にWEBで内装の好みを確認できるので、次の入居者が見つかりやすい」(小正主査)とみている。
 モデルルームは現在までに800人弱が来場し、約30世帯が同団地のDIY住宅に入居した。高齢化が進んでいた同団地に子育て世帯の姿が増え、退去者数を入居者数が上回るようになった。

「借り暮らし」にDIYで愛着
 小正主査は「今の20代はプロが作ったモノをそのまま買うより、カスタマイズするほうに喜びを感じる傾向が強い」とみる。
 「失敗もしながら、徐々に理想に近づけていくのが醍醐味。DIYが夫婦共通の趣味になったり、友達と工事してSNSに画像をアップするなど、人とつながることで愛着がさらに深まるようです」(同)。結果として賃借期間が長期化し、入居者が変わるごとに必要だったUR側の改装費を抑える効果も見え始めた。
 昨年10月には全国のURで初めて、同団地集会所に入居者用DIY工房も設置した。自宅を汚したり、騒音の心配をせず作業ができるスペースで、利用料は1時間220円。ふんだんに揃えられた電動工具や作業工具も使い放題だ。
 話題になった無印良品とのコラボなどリノベーション事業も兼務するUR都市機構西日本支社の団地マネージャー・田宮正太さんは「昭和40年代~50年代に建てられた団地は、容積率重視の現代のマンションより居住環境としては豊か。棟間が広いので日当たりや風通しがよく、リノベやDIYで再生するのに向いている」と事業の成功に自信をみせる。
 西日本支社では、施工体験ができる「DIYキャラバンツアー」も各地のUR団地で展開中。リノベ住宅の開発も強化しており、「DIYとリノベの相乗効果で、町を元気にしていきたい」(田宮さん)という。