連載

2013年11月10日号

徹底した省人化工場で海外勢を圧倒

順送りプレスへの工法転換、量産コスト削減
伊藤製作所[精密順送金型、部品製作]
三重県四日市市

 リズミカルなプレス音と共に、次々と成型部品が生まれだす。その数、日産約100万個(プレス加工部品)に対し、工場内のスタッフはわずか15名。伊藤製作所(伊藤澄夫社長、従業員数85名)の徹底した省人化工場は、海外勢を圧倒するコスト競争力を生み出す。
 1つの金型で複数の工程をこなせる順送りプレス金型を自社製造し、材料の自動供給、プレス機の連続運転を行う。また、プレス加工部品が入る箱に自動取替 システムを導入したほか、プレス後のスクラップはベルトコンベヤーにて日当たり15トンが回収トラックまで搬送されるなど省人化を推進した。
 さらに全80台のプレス機のうち50台には金型を付けっぱなし(月産10万個以上の部品)にすることで高収益化を実現。ボタンを押すだけの作業はパート 従業員でも充分対応が可能だ。専用機は週に数日しか稼働しないが、伊藤社長は稼働率にはこだわらず、「金型を頻繁に取り外す場合に比べ、段取り時間はもち ろん初品品質管理の時間を大幅に短縮でき部品不良率も減少した」と手ごたえ十分の様子だ。
 「1ドル80円の円高時でも、海外と比較して安価な部品が少なくない」(伊藤社長)という強力なコスト競争力が武器となり、2013年3月期の売上高は 約27.6億円と10年前の2.5倍にも成長して今期は約32億円を見込む。この間、従業員は約2割増加したのみだった。

■アジア三極体制を確立
 人の力は、新技術開発と金型設計力の向上に注ぎ込む。伊藤社長は「難易度の高い金型を製作するよりも、顧客に大幅なコスト低減を提案できる技術のほうが 重要だ」と断言する。年間一千万円以上を投じる年もあるほど技術開発に注力した結果、切削から順送りプレスに工法転換することで100円以上かかっていた 加工費が10円にまで下がるなどの事例も生まれた。たとえば板厚6mmの内歯底突ギア部品4カ所に1.5mmの細穴を開け、鏡面加工仕上げを施すなど、独 自の工法転換を実現した。また、ファインブランキング並みの精密せん断ができる順送りプレス加工技術も開発。この技術はシートリフターのギアとエヤコンク ラッチなどで実用化しており、これら精密部品が同社の主力製品となりつつある。
 こうした技術は17年前に進出したフィリピン現地法人にも徐々に移転しており、現地技術者を熱心に育成した努力が今、大きく花開きつつある。11月から 稼働するインドネシアの新会社の立ち上げは、日本人ではなくフィリピン現地法人の技術者らが行った。「日本から技術者を派遣するのと比べて費用が10分の 1で済む。彼らは英語に堪能であるため技術移転は日本人よりスムーズだろう。金型製作を共に行う中で技術移転を図りつつ、立ち上げからすぐ生産に入れる」 (伊藤社長)など、メリットは数多い。
 「自動車生産100万台超へと成長するインドネシアでは昨今、人件費高騰が大きな課題。自動化が遅れている同国で省人化を可能にする当社の順送り金型技 術が大いに注目されている」(同)。インドネシア現法で順送り金型生産能力上がるまでには数年かかるが、それまでフィリピン現法、日本本社が支援する計 画。アジア三極体制で、各国の長所を生かしつつ、さらなる市場開拓に挑んでいる。