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ものづくり人材育成、地域一丸で

小千谷「名匠塾」、技能士養成で成果

 モノづくりの街といえば、東京都大田区、東大阪市、長野の岡谷・諏訪地区などが有名だが、高精度の領域で各種工作機器や機構部品を過去から現在に至って数多く提供してきた新潟県小千谷市(人口3万7000人強)もまた「知る人ぞ知る」の間で評価が高い。
 その小千谷の取り組みでキラリ光るのが「名匠塾(めいしょうじゅく)」の存在だ。熟練技術者の技能を継承しようと2007年に開講した教育機関。正式名はテクノ小千谷名匠塾だが、地元の人は名匠塾とだけ呼ぶ。
 設立・運営は小千谷鉄工電子協同組合。「協同組合でこのような教育機関を持つ例は全国にもおそらくない」(地元関係者)そう。さらに活動は組合の枠を超えて発展しつつある。既に名匠塾における技能教育の継続・深化が引き金となって、地元高校の総合学科にメカトロニクス系列の科目が誕生した。複数の関係者は「今度は工業高校を立ち上げたい。これが悲願」と口を揃える。「工業高校からの就職先は地元にある。学んで働ける環境が整えば人口の流出も食い止められる」。
 塾では「心を磨く」、「物を磨く」、「技を磨く」を設立当初から一貫してテーマに掲げ、国家技能検定の積極的な取得を進めてきた。当初からの目標だった「技能士100名輩出」を設立から7年目の一昨年度に達成。実績はさらに伸び、名匠塾で学び、技能士試験に合格した数は現在、累計115名を数えるそうだ。
 「2級合格者が大半ですが、一級技能士も出しています。初期に1級に合格した技能士で、最近、今度は講師として名匠塾に戻ってこられた例もあります」と事務局を務める小千谷商工会議所・櫻井貴将主事が話す。技術・技能を受け継いでいく理想の形が出てきた。
 塾にはNC旋盤、汎用旋盤、平面研削盤、フライス盤などが並ぶ。07年に起きた新潟中越沖地震の復興基金などを活用した設備だ。旋盤の数が相対的に多いが、これは「丸物の金属加工に強い小千谷の特色を映したもの」(関係者)らしい。平日の午後3時過ぎ。取材時には、この春、店舗の売り場担当から加工業に転職した若手が、フライス加工を学んでいた。マンツーマンの授業。手元の電卓を弾きながらの機械操作。授業が終わると汗を拭き「面白いですよ」と笑顔を見せた。
 名匠塾は組合で運営するため、基本、利用できるのは組合加盟企業の社員に限られる。だが地元の商工会議所はじめ小千谷市も応援の手を伸ばす。職業訓練校のOB教師をスカウトするなど、現場の取り組みも枠を超えつつある。産学官活動の交差点としての存在感が高まっている、といえそうだ。