コラム

2015年7月25日号

 気持ちというものはつい醒める。仕事でも人間関係でも、恋だってそうだろう。いや元来、人間の感情は絶えず起伏を繰り返し、テンションの高い時もあれば下がる時もくる。むしろ下がった時に落ちついていられれば、視野が広がりよく考えが進む場合がある▼迷走を続け、ついに白紙化した新国立競技場の建設問題は、五輪開催に対する国民の熱を冷ませ、しらけさせてくれたが、ある意味、いい機会が来たと感じる。責任を押しつけあう体たらくな政治を擁護する気はないが、今回の茶番を経て、オリンピックや将来に対する見方が深まればいいじゃないか▼他の五輪スタジアムの数倍の建設費をかけてまで最新型にする必要があるのか。高嶺の花的建築物でなく、一般市民も将来利用できる施設にすべきでないか。旧国立競技場や甲子園のように、ファンからずっと愛される為の魂をどうやって入れようか…。いろんな考えがもっと表に出て欲しい▼五輪開催決定時に話題になった言葉に「おもてなし」があったが、決しておもてなしの為の五輪開催ではない。日本がどういう将来を指向するのか、その姿を五輪にせよ新競技場にせよ、ぶつけてもらいたい▼昭和期の著名な作家が、日本人はもっと自然であれと過去、次のように記した。…平和的なもの、無害なもの、清潔なものだけを外国人に見せようというのは日本古来の接客道徳という考えもあるが、それは明らかに偽善、欺瞞である…。よくみせたいじゃない。自分たちの為に何をしたいか、だろう。