連載

2015年8月10日号

「超硬&微細」軸に、最先端で独自展開

充実の設備、人の力で縦横に活かす
ナカヤマ精密[超精密加工]

熊本県菊池郡

 国内に残るモノづくりを指向してきたというナカヤマ精密(中山愼一社長、従業員約190名)。
 大阪市に本社を構えつつ、工場は創業者の出身地・熊本にずっと置いてきた。2年前には熊本工場に近い阿蘇山を望む緑豊かな高地にR&D拠点「テクニカルセンター」を建設。ブルーに輝くカーテンウォールの外観と、吹き抜け構造のエントランスが印象的な建物は、落ち着きがあり瀟洒だ。隣にソニー、少し離れて東京エレクトロンの大規模事業所があり、シリコンアイランドの真ん中で先端加工に挑む。「中小でもやれるんだとの心意気を込めて建設した。しかしまだ軌道に乗ったとは言い切れない。模索しながら進めている段階」と中山社長が切り出した。

■先端にトライ
 超硬合金のダイス加工や、半導体シリコン搬送用の治工具製作を長く続けてきた同社は、近年、売上の約6割を占めるまでになったLED・電子部品のナノオーダーの微細難加工で業績を伸ばす。他の事業は自動車や半導体関連の加工等。医療・航空機分野の受託加工も売上が立ちだした。
 先端分野に特化するにはベースが必要だ。同社が努めるのは社員教育、多能工化、VA・VE活動、そしてマニュアルを超えて創意工夫を生み出せる職場環境づくり…。中山社長は「工場の稼働率は7、8割でいい。チャレンジできる余力を残し、それを将来に向け有効に使いたい」と語る。
 設備投資も活発だ。いや、したたかにラジカルといった表現が似合うかもしれない。「新しい機械を8割使いこなせば、5、6年前の機械を100%活用する同業他社に勝てる」(同)の考えに立つ。
 テクニカルセンターには高精度な恒温恒湿室を設けた。牧野フライスやアマダの恒温工場、ミツトヨの地下工場などを視察研究し「温度は仕様レベルでプラスマイナス0.5度。実測値で±0.2度を保つ」(同)までに。この空間に有力メーカーの超精密加工機が、ソディックのAZ250、碌々産業のアンドロイド、東芝機械UVM450(2台)と2台ずつ向かい合い計4台が並ぶ。また、やはり恒温恒湿の測定室には、大型3次元測定機はじめ多種の測定システムを設置。高額のマイクロCTスキャナー、X線分析装置などもあり、聞くと「微細加工の工程で不可欠な検査・測定機だが、思い切って充実させた。検査測定の受託事業も育てたい」(同)と返ってきた。

■ナノオーダー、日常で
 機械は、あえて様々なメーカーから購入する。「よく言えばいいとこ取り。複数の機械の性能を知ることで視野も理解も広がる」と言う。
 「世の中に無いものを設備する」も、同社らしいスタイルだ。一例として、微細加工で最終仕上げを担う東芝機械のマシンは、工具測定、ワーク測定の2つのシステムを搭載した独自仕様にしている。
 中山社長は言う。「5ナノの加工を行えるといっても、精度を保証しコンスタントに仕事としてこなせるのは50、100ナノのクラス。まだ技術を上に伸ばす必要がある」。
 同社が仕事とするレンズ金型、燃料電池のセパレータ、狭ピッチコネクタ、LED部品、高精度パイロットピン…などの加工の多くは、難しいとされる一方で高度なマニュアル化が進み、生産場所は東南アジアなどに移っている。同社からは、マニュアルでは仕事として託せない分野を探す様子もうかがえた。前述した検査事業以外にも組立分野などで可能性を追う。熊本大学との産学連携によるガン早期発見の為の「タンパク質検出装置」の製作など、フィールドは縦横に広がってきた。
 上海と香港に営業所を持ち、以前からアジア展開しているが、モノづくりだけは「熊本にこだわりたい」と中山社長。
 「何の為の経営ですか? 単にお金儲けだけじゃない。働いている人の生活を維持するという、その企業の責務をしっかり貫くことが経営です」。―そのために国内で挑戦を続ける。