コラム

2015年9月25日号

 やはり来たか、という感じだ。安倍首相は自民党総裁再選が正式に決まるや否や、GDP600兆円目標を柱とする「新3本の矢」を発表した▼安保関連法案をめぐる与野党の対峙が続く折から「これが通れば再び経済最優先の政策に移る。大きな発表もある」などと経産省管轄の団体・協会で実際に何度か聞いていた。だから「やはりそうか」の思いがある▼発表直後から、具体策に欠くとか、GDP成長率の目標値を600兆円という数字に置きかえインパクトを持たせただけ、など批判めいた声が出ているが、先の来年度予算の概算要求の中身をみると、今回の新3本の矢に符合する面も感じられる▼いずれにせよ、具体策の策定を急ぐよう各省に指示が下ったのは確かなようで、まだ抽象的なスローガンに輪郭と中身が加わってくるのは間違いなさそうだ▼しかし、どこかにひっかかりも感じる。「アベノミクス第2ステージ」をぶちあげることで政権の求心力を回復させようとの思惑。日本国民の目が放たれた「矢の先」に向かうことを知ったような絶妙のタイミング。安保法案を巡る政治不信を遮断するかのように、見事、別のチャンネルに絵を切り替えてのけた▼かくして、空気を読むに敏感な日本人の関心は、俄然、今後の経済運営に向かいそうなのだが、これでいいのだろうか。ありとあらゆる出来事をファーストフードを消化するように簡単に理解し飲み込み、次の話題に移る。そんな社会になってしまったとの思いが残る。愚生のたわごとに過ぎないのかもしれないが。