コラム

2015年10月10日号

 ある知人と雑談して思わず唸ってしまった。彼の曽祖父だかは、江戸末期に生まれ、太平洋戦争の終戦からしばらくして亡くなられたと言う。「だから何?」と賢明な読者に言われそうだが、こちらとしては頭の中にある歴史の長さと、意外にも短い実際のそれとの差異に驚く▼なるほど、大政奉還が1867年。仮にこの年に生まれ90歳を生きれば、戦後の高度成長期(1955年~)を経験することになるから、十分あり得る話なのだが、遠い過去と思っていた江戸時代が、実は数世代前の先祖の記憶にしっかり刻まれていることをハッと再認識した次第だ▼同時に、江戸期に生まれ戦後に亡くなったその人の人生が少々気になった。この間、時代や社会はどれだけ変わったか。価値観がぐるりぐるりと変わるなか、翻弄されるようなことは無かったのだろうか…▼人間は環境に適応する、あるいは適応してしまう生き物というから、うねりを打って変わる時代とも、それなりに付き合っていけたのかもしれない。が、見方を変えれば、現代のこの先、どんな変革が待ち受けているのか知れたものじゃない。やはり人は適応するのか▼TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が、日本が参加を表明して以降の2年以上の厳しい交渉を経て大筋合意に達した。これを受け、RCEP協定(東アジア地域包括的経済連携)や日本とEUの経済連携も締結に向け交渉が加速すると一部で見られている。国際社会の変革はまだ序幕。適応だけでなく、主体的に激変の時代に向かい合えればと思うが。