オヤジの喜怒哀愁

2015年10月10日号

ラグビーW杯

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 若い頃に比べると、感動することが少なくなった。歳をとって涙腺は緩み不意に落涙する機会は増えたような気がするが、からだごと心の底から揺り動かされることが少なくなった。目にするもの、耳にするもの、何か思惑や利害が絡んだ筋書き、予定調和が透けて見えることが多すぎるせいかも知れない。
 ところが、先日久しぶりに我ながら興奮して感動してしまった。ラグビーのW杯、日本対南アフリカ戦である。なんだ、そんなことかと言われるかも知れない。しかし、スポーツの名勝負ほど心を揺り動かされるものが今の時代、ほかに何かあるだろうか。
 W杯24年ぶりの日本の歴史的勝利もさることながら、感動したのはその試合内容だ。一進一退、二転三転した挙句、インジャリー・タイムの時間切れ寸前の最後の最後のプレーで見事なトライをあげ、日本は勝った。野球でいうなら7対4で負けている9回裏二死の土壇場から代打逆転サヨナラ満塁ホームランをかっ飛ばしたような試合だった。まさにスポーツは筋書きのないドラマである。
 「ノット・リリース・ザ・ボール」とか「倒れこみ」とか、ラグビーは遠目には見えにくい密集内の反則でプレーが中断することが多いので、ルールがわかりづらいという人もいる。が、要はボールを前に投げずにパスやキックをつないで敵陣に飛び込めば得点になる単純シンプルなゲームである。球技と格闘技の要素を併せ持つところが魅力だし、どちらに転がるかわからないあの楕円形のボールからして予定調和とは無縁のおもしろいスポーツだと思う。
 2019年にはアジア初開催となるラグビーW杯が日本に来る。新国立競技場の問題でメーン会場が宙に浮き、日本代表ヘッドコーチを務めるエディー・ジョーンズ氏のW杯後の辞任決定もあって開催を危ぶむ声があったが、南ア戦の勝利がそんな声を一蹴した。
 チーム強化にあたってはジョーンズ氏の存在は無論大きいが、同氏を起用した日本代表ゼネラルマネジャー(GM)岩渕健輔氏の手腕もある。ヘッドコーチがディレクターならGMはプロデューサーだ。これまで難しかった「ティア1」と呼ばれる世界の強豪国とのテストマッチを増やすことに成功し、チームに世界で通用する経験と自信を与えた。

 日本代表の決勝トーナメント進出は、本稿掲載時点で微妙なのだが、勝負の世界は何が起こるかわからない。勝利の女神が微笑んでくれていることを願う。