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日立物流、インフラ確保で影響軽減

社内外の連携を重要視

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 企業の物流業務を包括的に請け負う3PL事業。国内最大手の日立物流(本社=東京都江東区)は、国内だけでも24社364拠点にネットワークを広げている。
 サプライチェーンを結ぶ大動脈は、災害発生でさらに重要度が増す。食糧、医薬品、インフラ資材…必要な場所に行き渡るには、物流業の存在が不可欠だからだ。
 モノの行き来を成立させるには、いくつかの条件をクリアする必要がある。まず挙げられるのは、ドライバーと車両燃料の確保。それに倉庫内の電気だ。
 物流業務の心臓部とも言うべき倉庫は、商品を確実かつ効率的に運び出すために、施設全体のオートメーション化が年々進んでいる。
 2014年7月に完成した最新鋭の掛川物流センターは、保管容量約1万5500パレットの垂直搬送型自動倉庫をはじめ、ケース自動仕分装置、荷物用エレベーター、小分けの商品を店舗別に仕分けられる「インテリジェントカート」などの設備・機器を備えている。在庫数などの商品情報をすべてデータで管理していることから考えても、停電すれば一つの商品さえ動かすことができない。
 掛川物流センターには、BCP(事業継続計画)の取り組みを象徴するような設備がある。出力1250kVAの自家発電設備だ。リスクマネジメント部長の沖山雅彦氏は、設置した理由についてこう話す。
 「電気さえ復旧できれば、商品の出荷も含めて倉庫内の問題はある程度解決します。掛川の場合は、ドラッグストア様向けの医薬品を数多く保管している関係上、災害発生時に最優先で取り出す必要がありますし、品質管理に必要な空調を停めることはできません」
 といっても、国内にあるすべての倉庫に発電設備が完備されているわけではない。投資すべき優先順位は存在しており、施設の新旧に関わらず、重要拠点から発電設備を順次導入したいという。
 有事に備えて、トラックなどの運搬車両に使用する燃料の確保にも着手した。東日本大震災では、全国規模で燃料不足が発生し、支援物資を運ぶ物流業界にも影響が出たからだ。
 2015年5月に策定した災害時燃料調達BCPは、平時から燃料業者に3日間運行できる量を備蓄してもらうというもの。契約にあたり、各営業所が通常の約50%操業できる燃料消費量を算出。有事発生時には要請があり次第、ドライバーも含めてタンクローリー12台がいつでも出動できる体制を整えた。
 備蓄タンクがあるのは、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪の5カ所。各地に点在させているのは、どこの営業所にも運べるように効率を考えた結果で、主要道路が通行止めになったことを想定した移動ルートも複数準備している。

■約2年で全社を巻き込む体制に
 業務に使用する運送車輌のうち、日立物流が所有するのは1~2割。災害時でもスムーズに対応するには、委託業者の協力なくしては成り立たない。
 沖山部長は、委託業者の経営幹部が集まる会合などで、BCPの重要性を説明している。
 「以前に実施した協力業者様向けアンケートによると、BCP策定率は約30%。国内の現状と照らし合わせると、比較的高い数値だと思います。大規模災害に1社で対応するのは無理があります。『自分の身は自分で守る』が防災の鉄則ですが、BCPでは企業間で事前に対策を打ち合わせていくことも取り組みの一環だと思っています」
 リスク対策部(現リスクマネジメント部)の発足から、海外を含めたBCPの策定、災害対策本部用の資機材と備蓄品の整備、燃料確保まで、約2年間で全社を巻き込むところまで体制を整えた。
 13年7月にスタートした社員向け普及啓発セミナーは、これまでに5回開催。学識者などによる講演で、テーマも、減災、トイレ、水害、感染症など、多岐にわたる。

 毎月のように何らかの形で会議や研修を行っているが、机上の空論に終わらないよう、演習についても少しずつ対象範囲を広げて実施している。
 「BCPが発動したときには、全国5カ所にある営業本部があらゆる権限を持つことになります。車両、燃料、人員、物資の配置についてもそうです。最も必要とされる場所へ、いかに早くお届けするか。インターネットや衛星電話を通じて、本社や他の営業本部と情報交換をしながら、少しでも的確な判断が下せるように訓練する必要があります」