オヤジの喜怒哀愁

2015年11月25日号

オーディオの原点

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 オルゴールというのはオルガンに由来する言葉なのだが、英語圏ではミュージック・ボックスと呼ばれるのがふつうなのでオルゴールといってもなかなか通じない、と先日訪れたオルゴール博物館で聞いた。さらに意外だったのは、オルゴールがオーディオの原点だったというその歴史である。
 オルゴールが生まれ、普及していった時代はちょうどイギリスで産業革命が起こった時代と重なっている。初めてつくったのは時計職人といわれ、元々は教会が定刻に鐘を鳴らすための技術だったようだ。
 円筒形をした金属のシリンダーに音楽の譜面に合わせてピンを植え付ける。一方で、金属板に切れ目を入れて髪の毛をとかす櫛のような形をした物をつくる。シリンダーを回転させ、ピンが櫛歯を押し上げて弾くと音が出る。オルゴールの原理は今も変わっていない。
 シリンダーのピンには譜面が記録されているわけで、これを生かして櫛歯だけでなく、本物の楽器を自動演奏する物もつくられた。1つの箱にオルガン、バンジョー、カスタネット、トライアングル、笛、ドラムなどを内蔵し、演奏する大型の物もある。まさにミュージック・ボックスで、駅やホテル、レストランでジュークボックスとして活躍した時代もあったそうだ。
 19世紀にはシリンダー型に代わるディスク型が現れる。博物館で初めてそれを見た。なるほどこれはレコードプレーヤーのような形をしている。金属製の円盤には原盤でパンチされた穴が空き、その部分がめくれ上がってピンの役割を果たしている。見た感じ粗いおろし金のようなものだ。レコードのように1分間に33回転も45回転も回るのではなく、ゆっくりと1回転する間に1曲演奏するように盤上のピンに記録されている。
 ディスク型は大量生産を可能にしオルゴールを大衆化するとともに、交換が容易なためソフトが多様化し、シリンダー型を凌ぐ勢いで普及していった。が、間もなく19世紀半ばには蓄音機が発明されこれに取って代わられる。
 オーディオの原点はオルゴールなのである。