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高圧クーラントで高速切削、機械加工業界で反応ジワリ

東大生産技術研究所は学術論文を公開

 チタン合金やニッケル基超耐熱合金などの難削材を高能率に切削するための技術として、「高圧クーラント」の活用がここにきて注目を集めている。
 クーラントの技術状況に詳しい向きからは「高圧化は以前にも試みられたが普及しなかった。いわば過去の技術」などと一時冷ややかな声も混じったが、ここ成果例が相次いで伝えられ、工作機械メーカーでは高圧クーラントシステムを準標準仕様として装備したり、営業時に積極提案するケースが増えつつある。
 モノづくりが回帰しだした今こそ、国内で高圧クーラントによる高能率切削を普及させたい。ユーザーにとって間違いなくチャンスになる―。
 そう語るのは、産業用高圧ポンプメーカーとして、7〜30メガパスカルを超す高圧クーラントシステムを提案するトクピ製作所の森合主税社長だ。森合氏は数年前から、機械メーカーや各種製造系の団体、研究会を足しげく回って、高圧クーラント採用の効果を説いてきた。「実験を繰り返しつつ、一社、一社、地道に提案し続けた」(森合社長)なか、採用に踏み切った機械メーカーや機械加工のサプライヤーから「加工効率の大幅アップ」、「工具寿命の伸び」などの成果が伝えられだした。現在では、高圧クーラント対応の機械や工具をアピールするメーカーも相次ぐ。
 学術的な裏づけも取れてきた。東京大学の教授・研究者と森合社長は、先ごろ「高圧クーラントを用いた高速切削の動向と最新のトピックス」と題する学術論文をとりまとめた。この論文は東京大学生産技術研究所が公開している。
 前述した「クーラントの高圧化は過去にも試行されたが普及しなかった」点について、論文は「クーラントについて本格的な研究が開始された90年代は、難削材の切削量が非常に少なく、また工作機械のクーラントの配管系が高圧クーラントに対応していなかった」などと、普及に至らなかった理由を記す。
 そのうえで、クーラント高圧化の効果として、「切りくずが確実に短く分断できる」(工作物や工具に絡みやすい長い切りくずが排除できる)点や、「工具摩耗の抑制効果」などを検証実験から導いた。論文は「高圧クーラントの圧力設定が大変重要」と繰り返し記述しており、被削物や工具素材によって、条件や効果の程度が変わることも述べている。
 加工条件を上げることは、加工現場の永遠のテーマであり、また重要な個のノウハウでもあってきた。高圧クーラントの有効活用という新たな要素を加えた「最適加工条件の洗い出し」が今後、各所で進みそうだ。
 前出の森合氏は高圧クーラントについて「旋削、マシニング加工で試行し、成果を出してきたが、今後は研削分野での有効活用を含め、提案の幅を広げる」などと話す。