オヤジの喜怒哀愁

2016年2月25日号

ラーメン激戦区

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 おいしいラーメンが食べたい季節だ。お気に入りのラーメン店のひとつやふたつなくてオヤジと言えるだろうか。否。清く正しいオヤジならずとも我々日本人はラーメンが好きなのである。
 ただし、必ずしもイチオシ、ニオシのラーメン店でなくともラーメンは食べたくなるものだ。飲み過ぎた後などはとにかく何でもいいからラーメンが食べたいという衝動があるものだし、それにラーメンの魅力には、店ごとにこだわりが違う、味がかなり異なる、それも結構楽しいということがあるからだろう。
 新しい店ができると食べに行きたくなるのは、新しいラーメン、これまで知らなかった味との出合いを求めているからだ。出汁、スープ、麺、麺の茹で加減、チャーシュー、具材から器の丼ぶり、店の雰囲気に至るまで1杯のラーメンを構成する要素は多い。それだけさまざまなバリエーションがあり得る。
 ところでいま、ラーメンと並ぶ国民人気食にカレーライスをあげることができると思う。しかし、味のバリエーションという点ではラーメンに軍配が上がる。それに加え、カレーは家で作ってもおいしいがラーメンはなぜか外で食べたほうがおいしい。カレー専門店よりもラーメン専門店の数が圧倒的に多いのはそこに理由があるのだろう。
 その意味では、日本全国どこへ行ってもラーメン激戦区なのだが、都内中央線沿線に住んでいたころ、この地域はラーメン戦争と言われるほどの激戦区であった。荻窪や西荻窪の有名店には長蛇の列ができた。沿線はまた、いまなお戦後の闇市の雰囲気をたたえる小路の交錯した街が残っていて、そんな中にカウンターしかない小さなラーメン店があって店内、店外に順番を待つ人があふれていたものだ。
 筆者のお気に入りの店のひとつは中野駅北口にあった。こってり系と対照的な薄塩味のラーメンで、鶏肉の細切りが乗っているいわゆる「鶏そば」である。そして、柚子の皮がひと切れ放り込んであった。平凡な味が好きで通ったものだが、もうずいぶん前に店は閉めてしまった。
 もうひとつは三鷹駅南口の小さな雑居ビルの地下。元は屋台だったそうで、厨房と一体となったステンレス製のカウンターが屋台時代の名残りを伝えていた。太めの日本そばのようなボソッとした独特の麺はほかに類を見ない。ここも閉店したが、それを惜しむファンの声に応えて元従業員が店名を変えて営業を再開した。