コラム

2016年3月10日号

 平日朝の新幹線。出張族の間では「混み具合が景気のバロメーターになる」と言われるようだ。確かに景気が落ち、コストカットの嵐が吹くような時は乗客が減る。ここ環境不透明感が増していたが、混んだ車内を見渡すと、内閣府の街角景気ならぬ「新幹線景気も悪くないぞ」と、分かったような気になる▼それにしても、早朝だと乗客の8割方が寝てしまっている。電車内で寝る人の割合は日本が世界で一番高いと聞くが、新幹線車中はさらにその率が高そうだ。寝るのは安心できる社会だからか。単に疲れているからか。その両方だと誰かが言っていたっけ▼そんな朝の新幹線に外国人観光客の一行が入ってくると、出張サラリーマンはヤレヤレである。元気いっぱい。席の列を超えて大声でしゃべり、歩き回る。さしずめインバウンド景気の「闇」を見る気分にさえなる▼あるとき、筆者の隣に巨大なスーツケース3個を引きずって中国の中年女性が座った。一個だけで2人掛け座席の前の床と空間を埋めつくす。弱りつつ声をかけると、有名な国内衣料品チェーンの名を上げ、午前大阪、午後名古屋へ、生地や試作の衣服を見せに商談で行くと言う。名刺には総経理とあり、工場を3つ、うん千人の労働者を采配しているそうだ▼しばらく中国事情をヒアリングし、紙面にも少し使ったが、屈託のない話と、タフネスぶりに感心させられた▼昨年3月の北陸新幹線金沢延伸から一年、3月26日には北海道新幹線も開通する。寝て移動する空間でなく、景色や会話を楽しんで乗ってみたい。