オヤジの喜怒哀愁

2016年3月25日号

木の棘

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 先日、夏みかんを収穫して都会に住む知人に送った。マーマレードを作るというので毎年送っているものだ。夏みかんよりも酸味が抑えめで比較的早い時期に甘みが乗ってくる甘夏に人気を奪われた感のある夏みかんではあるが、おいしいマーマレードを作るためには夏みかんの強い酸味が欠かせないという根強いオールド・ファンがいるのである。
 たしかに夏みかんには夏みかんの、甘夏には甘夏の味があり、よさがあると思う。だが、夏みかんは近年だんだんと手に入りづらくなっているとも聞いている。そんな話を聞くにつけここはひとつ、とって送ってあげようと思うわけなのだが、とる方にとっては夏みかんは甘夏よりも大変なのだ。
 夏みかんの枝には甘夏にはない長く鋭い棘があるからだ。木の内側に成っている実をとろうと闇雲に腕を中に突っ込めば、棘が刺して痛い目にあう。甘夏が人気を呼んだもうひとつの理由は、こうした生産者の作業性もあるに違いないと睨んでいる。
 先日は地元の生産者直売所でタラの芽を売っていた。山菜の王者とも言われる独特の苦みはご存知の通り天ぷらがおいしい。そして、このタラの木にも棘がある。
 夏みかんの木のように長くはないけれど、短いが鋭い棘が樹皮を覆うようにして生えている。タラの木は案外と生育が早く、放っておくとすぐに背が高くなってしまう。そうならないうちに早めに切ろうと思うのだが、この棘が厄介なのだ。
 切る時に邪魔だし、切った後の木を運ぶ時も邪魔になる。当たり前だが棘が刺されば手が痛い。というわけで、ついつい伐採を先延ばしするうちに背が高くなってしまいいよいよ切りづらくなるということになりがちである。
 近所に住む知人は最近、蜂に凝っていて、杉板に焼き目を入れて作った自作の蜂箱にニホンミツバチの巣を誘導しようと日夜、研究にいそしんでいる。ただ漫然と箱を置くだけでは蜂が寄ってこないので、蜂を寄せるためにニセアカシアの木を移植しようということになった。5月の連休明け頃に咲くニセアカシアの白い花房は蜂が好むことで有名だ。しかし、この木にもバラの棘を大きくしたような棘がある。移植はしたいが棘が刺さるのは嫌だな、ということでブレーキがかかる。
 このように、植物の棘というものは人間も含めた周囲の動植物、環境にそれなりの影響を与え、棘を持っている植物自らの運命を左右する力を持っている。