連載

2016年4月10日号

現場志向のIoT化、生産性向上導く

スマート工場、中小から先進事例

 産業高度化プロジェクト「インドストリー4.0」を提唱し、各国の次世代製造革命の火付け役となったドイツ企業は今、ソフトウェア分野の国際特許取得を急速に推し進めている。中国における特許取得も急増中。こうした独企業の狙いについて、製造業向けIoT支援を行うKMC(神奈川県)の佐藤声喜社長は「まずはソフトウェアによるサービスで世界のデファクトスタンダードを握り、いずれはそのソフトウェアに対応した生産設備で覇権を取ろうとしている」とみる。
 独企業の特許内容としては、オペレーターの要望に応じて自動で生産設備の入れ替えや動作制御を行うためのものなどがある。こうしたソフトウェアの将来像には、生産設備の自由な入れ替えなどで1個限りの製品を効率的に生産する「マスカスタマイゼーション」の実現が透ける。

 さらに、ビッグデータ解析による動作検証や新サービス創出の目的があるのか、「独自動車大手では、『品質管理強化に向け、独企業の生産管理ソフトを導入してほしい』と各国のサプライヤーに強く要望している」(佐藤社長)とも。コンサルを含め数億円~数十億円の投資はサプライヤーの大きな負担で、導入に伴う生産・技術データの流出も懸念されている。

 

■独自のIoT化で不良ゼロへ

 ドイツがこうした「トップダウン」方式のIoT化で、データの吸い上げに力を入れるのとは異なり、日本は生産性向上を主眼にした「ボトムアップ」のIoT化を志向する。その先進事例といえるのが、プラスチック光学部品メーカー「ナルックス」(大阪府三島市、従業業員257名)だ。

 同社では数年前から自社設計の自動化設備やロボット等を積極導入。レーザープリンタ向けのfθレンズ等を生産する本社工場では、自動化率が約94%にまで高まった。車載光学部品などを生産する野洲工場では「設備同士がネットワークでつながり、モーターやアクチェーターなどの連動制御が可能。より効率的な自動化工程を実現できる」(製造部・井田部長)という。さらに、光学的評価の自動化も進展中。北川清一郎社長は「スマート工場の取組を進め、不良発生率をゼロにまで近づける」と意欲的だ。
 同社では約1年前から、産業用オープンネットワークEtherCATへの対応を最優先し、設備を更新してきた。成形機を中心にした独自の制御プログラムを組むのに苦慮してきたこれまでと比べ、生産設備の連動がよりスムーズになったそうだ。さらに生産現場から集めたビッグデータを収集解析できる独自のITシステムについても、大学と共同で開発している。
 北川社長は「生産中の温度や圧力、振動などを常時モニタリングすることで不良発生原因を解明し、機械の制御やメンテに活かすことで不良発生率を限りなくゼロに近づけたい。その製品がいつ・どこで・どのような条件下で生産されたかのトレーサビリティをITシステム上で一元管理でき、品質保証にも役立つだろう。今は熟練者のノウハウが必要な金型の段取りについてもデータ解析を進めることでいずれは自動段取り化を実現し、多種の製品をフレキシブルに生産できるラインが構築できるはず。複雑化する製品構造への対応にも活かしたい」という。
 全システムの完成を目指すのは5年後。「順次ステップアップして導入しつつ、現場に応じた改善を永続的に進めていく」という。

(写真=ナルックス本社工場、回折格子の量産ラインに設置した自社開発の自動化装置。端材の処理や簡易検査、箱詰めを自動で行える)