コラム

2016年4月25日号

 明るいナショナル、みんなうちじゅう、なんでもナショナル…。松下電器産業(現パナソニック)が昔、長いこと人気テレビ番組のオープニングで流していた曲を懐かしく思い出した▼曲を思い出したのは「記者さんにも最近のマーケティングを知って欲しい」と某所でドンと渡された資料に目を通していた最中である▼資料は消費者像の変化を次のように表現していた。高度成長期、供給サイドから見た消費者像は「十人一色」だった。だが昭和の末頃「十人十色」に変わり、いまは過去の消費者像を幾分併存しつつ「一人十色」の時代に移ったという▼ビジネスの実践を思うと今の世は大変そうだ。一人十色に対応した販売促進策は、通販サイトが消費者に提供する「あなたが選んだ商品を買った人はこんな商品も買っています」の情報が象徴的という。やはりITの力というわけか▼でも、この手のアプローチはドライで無機的、自分が解析され消費パターンを見透かされた気にもなる。同時に、ITを使いこうした戦略をやれる大手と、ITを活用できても分母が小さく、販促に活かし切れない中小との差が開くだろうと想像する▼なるほど「一人十色」対応のビジネスをITで生み出せれば、今の社会で成功しそうだ。しかしそれを行う主体が、あくまでコンピュータだとすれば、どこかもの悲しい。こうした手法が消費分野に限らずいろいろ広がっている現実を見ると、つい懐古的になってしまう▼けれど、どこかが違うと感じるところに、人間くさい世界が盛り返す契機がありそうだ。