連載

2016年4月25日号

成形性高める金型設計力に強み

メキシコ進出、世界4極体制へ
京都プラテック[精密金型設計・製作、樹脂成形品製造]
京都府久御山町

 グローバル市場を巧みに開拓する金型メーカーの好事例が、宇治平等院のほど近く、京都府南部の久御山町にある。家電・車載関連を中心にプラスチック部品を精密金型から一貫生産する京都プラテック(井手敏明社長、従業員数約130人)。国内の年間売上高は約70億円で、中国・タイ拠点の売上高は合計で国内の2倍強。金型部の北村太一課長は「中国、タイの現地法人でも日本と同等品質の金型と部品を生産できる」と誇る。
 国内売上の内訳は車載部品関連が20億円、家電・OA機器(アッシー品・完成品)が43億円、金型外販が7億円の構成で、客先の内製比率向上や円安の影響から客先の海外工場に金型のみを輸出するケースも増加中。
 為替変動や顧客ニーズに応じて、日本で設計打ち合わせした部品を中国・タイで量産したり、その逆にも対応できる。そのフレキシブルな生産体制は2017年4月に稼働を控えるメキシコ工場(車載部品中心、約100人)にも広がる予定だ。
 拠点別の品質差を無くせる要因は、金型技術者の育成に最大のポイントがある。マザー工場となる国内金型工場の技術者らは金型設計と機械加工の両方を担当し、さらに放電・マシニング・研削加工、組立調整、修正の全工程に精通する「多能工」。成形部品の各部位の構造に熟知することで、組立時のギャップを見越した設計ノウハウを育て、リレーボックス等の複雑に分割される金型でも手戻り(修正)ロスを減らせる。 同様の育成法により国内本社工場で海外現法の技術責任者を徹底指導し、中国現法の技術者がタイ拠点を指導できるまでに成長した。
 また、5年前から設計のフル3D化に取り組み、「設計者個人の頭の中にしか残されていなかった干渉チェックポイントなどのノウハウの共有化が急進展し、手戻りを未然に防ぎやすくなった」(北村課長)。下請けにも3D化を推奨することで2次元図面に書き換えるロスも激減し、設計スピードは従前の3割減~半減にまで向上した。海外拠点にも国内と全く同じ3D設計・シミュレーションソフト、同じ仕様の機械設備を導入しており、国内外のノウハウの共有化や遠隔指導もスムーズだ。

■設計からも「直彫り」対応
 グローバル拠点の技術をリードする国内金型工場では放電加工を極力減らし、切削のみで仕上げまで行う「直彫り」を推し進めている。放電と磨きの工程を省くことで金型の加工スピード向上が叶うのみならず、自動車関連では特に、品質のバラツキを抑えるため「手磨き無し」の顧客指定が増えているためだ。
 隣接する成形部門とのコミュニケーションを密にとることで、成形品の量産性を確保しつつ、より効率的に直彫りできる形状へと設計変更も可能。切削パスを追求し、HRC60以上の高硬度材でも直彫りで鏡面加工ができるようになった。
 最新鋭の工作機械の導入にも積極的で、真円度1ミクロン以下の金型製作(自動車部品・タンク周り)に対応するべく、昨年から安田工業の立型5軸MC「YMC430Ver.II」を導入した。北村課長は「これまで使用してきた安田工業の機械は経年劣化が極めて小さく、剛性も高い。高速回転中も刃の触れが小さいので小径の穴でも磨きレスの加工が可能。レンズや防水部品などミクロン単位で幾何公差を追い込まねばならない超精密金型を直彫りで効率よく生産できる」とみる。
 国内工場の今後の売上高目標は3年後に約3割増の100億円。「パテント戦略を見据えつつ新技術を開発し、イノベーションを起こす」という。医療機器部品や歪みレスの導光板などさらに高精密分野に挑む一方、2013年に開設した関東テクニカルセンター(神奈川県川崎市)では3DプリンタやモデリングCAD「フリーフォーム」を導入し、木目や皮など様々なテクスチャを用いた加飾の提案も進めている。

(写真=安田工業の立型5軸MC「YMC430Ver.II」を導入。高硬度材の金型も直彫りで加工し、ミクロン単位の幾何公差に対応する)