連載

2016年7月25日号

製造業のIoT、実証から「実装」へ

人と協調するAI、判断を支援

 7月21日から2日間、グランフロント大阪で開催された「NEC i EXPO KANSAI」。会場では同19日に発表したAI(人工知能)技術ブランド「NEC the WISE(ワイズ)」の技術群をはじめとする最先端技術を活かした、様々な先進ソリューションの導入事例が紹介された。
 NECは見える化、分析、制御・誘導の3領域で半世紀にわたって研究開発を進めており、音声・画像認識や機械学習、予測・予兆検知などの分野で世界ナンバーワンやオンリーワンのAI技術を多数持つ。
 そのAI技術「WISE」のコンセプトの一つに掲げたのは「人との協調」だ。例えば、量販店や消費財メーカー向けの「特売価格最適化ソリューション」では、量販店の店舗売上を最大化する特売価格を、AI技術の一つ「異種混合学習」エンジンで予測。POSデータ、気温・天候、キャンペーン、複数商品の価格バランスなど様々な要因が、予測対象商品や全体の売上にどう影響するかの規則性を分かりやすく表示する。なぜその予測結果に至ったかを明らかにする、いわば「ホワイトボックス化」することで、人の最終的な判断を支援できるというわけだ。しかも実証事例では、「ベテランが数日かかる量販店1チェーン分の特売値付けの作業が十数分~数時間で完了し、予測精度はベテランと同等かそれ以上」(説明員)という。
 製造業でもすでに実装されつつある。高度なすり合わせ技術が必要な某精密加工機器メーカーでは組立工程で20%のNGが出る悩みがあったが、「異種混合学習」エンジンを部品の組み合わせの分析に用いることで、NG比率が改善。「要因分析の内容がホワイトボックス化されているため、次の製品開発に活かすことができる」(第一製造業ソリューション事業部の関行秀部長)。

■可視化やAI活用が進展
 21日夕方、製造業のIoT活用について講演した関部長は、冒頭から「製造業におけるIoTは、世界中のあらゆる業種で『実証』から『実装』の段階へと移った」と強調した。NECでも会員企業1130社を有する「ものづくり共創プログラム」の中で、IoT実装を推進。関部長は実装から見えてきたIoT時代のものづくりのポイントとして、(1)マルチコネクティビティによる「ものづくりの可視化」、(2)AIの活用による「製造業の高度化」―を挙げた。
 実装事例として詳しく紹介したのは自社のプリント基板表面実装ライン(福島工場)だ。生産進捗度など毎月1.5TBものデータを見える化することで、分析にかかる時間を20分の1に短縮し、生産性を18%向上させた。
 具体的には、カメラで撮影したプリント基材の微細な断面形状の違いを「物体指紋認証技術」で判別して個体を特定し、製造条件や製造・検査実績などを個体別に記録。人による作業工程では、雑音に強い音声認識技術などによりハンズフリーで作業指示と実績報告を行った。これらにより、モノの滞留や人の動線、生産の進捗状況などを可視化し、不良原因の特定やカイゼン活動を加速。「今後、国内外の工場に活動を水平展開し、17年には生産性30%向上を目指す」という。
 福島工場等に実装した各種可視化技術は「ものづくり見える化ソリューション」として10月から発売する。「物体指紋認証による個体識別」はタグを貼れない製品を個体別に特定しトレーサビリティを確保できる先端技術として17年度上期から販売する。
 また、16年度下期には「エッジコンピューティング」のソリューションを展開予定。多種多様な設備・センサーなどからの膨大なデータを「脳」にあたるクラウドに収集統合する一方で、機械に近いエッジ領域(ファクトリーコンピューターやゲートウェイなど)に搭載したAIで「あたかも反射神経のように」情報を高速処理して装置側にフィードバックする技術だ。これによりリアルタイムの故障予兆や自動制御・誘導を可能にするという。市場投入する製品群としては、高信頼性無線、ExpEther、ファクトリーコンピューターなどを予定している。