連載

2016年8月25日号

金型企業発、製造業のサービス化へ

ボルト型センサで早期に不具合発見

 ドイツで開発されたボルト型センサが、日本の製造業のビッグデータ活用を大きく推進する期待がある。
 あらゆる製造装置や機械に組み込まれているボルトがセンサになれば、従来よりはるかに容易に、しかも測りたい部分の近くで、データの詳細なモニタリングが行える。そのボルト型センサから集めたデータの活用サービスを、まずは金型分野から展開しようとしているのが、鍛造金型メーカーのヤマナカゴーキン(山中雅仁社長、東大阪市)だ。
 ヤマナカゴーキンは独ダルムシュタット工科大学発のベンチャー、コンセンシス社が開発したボルト型センサ「ピエゾボルト」とモニタリングシステムについて、アジア総販売権とアジア特許使用権を取得。今年3月から本格販売を開始した。
 このピエゾボルトとは、荷重や振動を高精度に検知できるピエゾセンサをボルト内部に埋め込んだもの。新商品開発室の金秀英室長は「センサを金属で保護しているため耐久性や耐衝撃性に優れる。しかもボルトとしての締結性はそのままなのでJISB1176規格の半ネジボルト(M12、M16のほか近日中にM20にも適用予定)と代替でき、測定のために設備を大幅変更する必要がない」と説明する。
 測定データと不具合の関連をモニタリングすれば、金型の大きな損傷や加工不良が発生する予兆を早期に検出して修理でき、生産ラインの安定稼働が可能になる。
 例えば小型の鍛造加工への適用事例では、金型を固定するパンチホルダやダイスホルダとしてピエゾボルトを設置。ノックアウト時に製品外側がストリッパープレートに引っかかって破損する不良や、金型の潤滑方法のわずかな差を、ボルトにかかる負荷や振動の変動から検知してみせた。
 打ち抜き加工では、プレス機のロードセルのみでは検知できなかった、打ち抜き直後の板材の振動を素材別に細かに検出。板絞り加工では、金型の破損や不良発生につながりやすいスクラップの有無を、ボルトの電圧変動から検知した。

■ビビリ検知、より詳細に
 適用範囲は金型以外にも広がっている。山中社長は「最近では風力発電システムやロボットの異常検知などのほか、工作機械のビビリ検知精度向上や工具寿命の管理にも期待が大きい」と驚きを交えて話す。金室長によると、「工作機械への適用の場合、ピエゾボルトはバイトの締結部などよりワークに近い場所に設置できるので、素材別に異なる微小な振動など、主軸モータの電流変動では捉えにくい変化も見逃さない」という。
 普及のネックは価格。ピエゾボルトの販売価格は1本35万円、モニタリングシステムは150万円~と金型の設備品としてはかなり高価と言えよう。このあたり、同社ではピエゾボルトの自社生産で将来的なコストダウンも検討しているものの、山中社長は「普及には投資価値の理解がまず必要」と強調している。「鍛造やプレス工程の不具合の半数以上は、金型の設置ミス。高価な金型を破損してしまうことや、不良品選別の手間とコストを考えれば、データをモニタリングする価値は大きい」とみるからだ。
 さらに同社は鍛造シミュレーションソフト「DEFORM」の国内総販売代理店として、シミュレーションの普及黎明期を開拓した経験もある。山中社長は「DEFORMも発売当初は数千万円したが、設計時間短縮や不具合軽減の事例が蓄積されるにつれ、必須のソフトと理解されるようになった。ピエゾボルトも同じく、実績を積み上げ、価値と必要性を理解してもらえれば普及が進むはずだ」の確信がある。
 将来的には、より高度なサービス提供も狙う。「シミュレーション側では見えない実加工時の条件差をピエゾボルト等でモニタリングすれば、条件別の不良発生率を数値化するなど設計ソフトの最先端を走れる」(金室長)の展望も。山中社長は「新型センサの開発やAI活用も検討中。センサ、シミュレーションなどを含めたサービスを新事業として立ち上げ、5年後には現在の全売上の2割を目指す」と意欲的。データを活用したサービスでも稼げる、製造業のパイオニアとして進化しようとしている。

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