オヤジの喜怒哀愁

2016年9月10日号

ヘタムシ柿を食べる

8447

 まだ暑い日が続いている。残暑である。彼岸までは仕方がないが、太陽は大分傾いて朝晩はしのぎ易くなってきた。子どものころから夏が好きだった。盆を過ぎるとなんとなくもの悲しい気がしたものだが、近年は今ごろになると夏は十分堪能したのでもういいから一刻も早く秋になってくれぬかと念ずるようになった。夏が少々きつくなってきたのだ。夕方、蝉の声より鈴虫の音が優勢になってくると、よしよしとうれしく思う。残暑の中で一日千秋の思いで秋を待っている。
 山では柿の実が少し色づき始めている。本格的な収穫はもう少し後になるが、中に真っ赤に熟した実があるのでもいでみた。この時期に真っ赤に熟しているのはヘタムシにやられている実だそうだ。ヘタのところに小さな穴があいていて、そこから木屑のようなヘタムシの糞が排出されている。
 果実はヘタが大事で、ここにダメージを受けると熟成が早まり、腐敗へと向かうものが多い。柿もそうで、渋柿のヘタのところを焼酎に漬けてからしばらく置くとおいしく食べられるいわゆる醂(さわ)し柿も敢えてヘタにダメージを与えることで柿の熟成を進める技である。
 美味しい柿を見分けるにはヘタを見ろと言われる。ヘタが実にぴったりとくっついているものが良く、ヘタと実の間に隙間が空いているものは避けるのだ。隙間が空いているものは傷んでいたり、ヘタムシの食害にあっているものがあるからだ。
 ヘタムシは1シーズンに2世代が生まれる。6~7月頃の食害は第1世代の幼虫によるもので、被害果は褐色からミイラ状になり、樹上にそのまま残る場合が多い。8月以降の第2世代の幼虫による被害果は、はじめ黄褐色となり、その後、幼虫が他の果実に移動すると赤く熟し、最後はへたが枝に残ったまま落果するという。 いくつかもいだ実はいずれも真っ赤に熟していた。落果寸前だったのだろう。糞だけヘタについていて、虫がいない。ごく少数、穴の中から虫が出てくるものがある。どうやら第2世代による食害果のようだ。
 ヘタムシは、柿の樹皮のすき間などに繭(まゆ)を作って越冬するので、冬の間に粗皮剥ぎを行い、樹皮のすき間にある卵を削り落とすと食害から実を守ることができるそうだが、素人にはなかなかそこまでの芸当がない。
 試しに包丁で実を切って中を見ると、ヘタから侵入して実の上部の中心部にかけて食害の形跡がある。だが、それは部分的であった。その部分をやや大きめに切り取って、残ったところをスプーンですくって食べてみた。完熟した実は甘く、柔らかく口に溶けた。季節を先取りしたような、深秋の味覚であった。