連載

2016年9月10日号

デジタルツインが製造法則を変える

シーメンスPLMソフトウェア、複合化するバーチャル技術

 1+1を2以上に、ではない。技術を重ね従来は無理だった新しい可能性を生み出そうとの試みが、企業買収相次ぐソフトウェア業界で広がっている。主役は、製造革新の世界のリーダー役を狙う欧米系の巨大メーカー。バーチャル世界を舞台にしたシミュレーションが、リアルのモノづくりを先導する「デジタルツイン」の総合力を競う。
 統合型の次世代ソフトを発表したシーメンスグループのケースをみると…。
 シーメンスPLMソフトウェアは、シーメンスのビジネスユニットの一つとして、シ社グループ「デジタルファクトリー事業部門」の一翼を担う。
 この8月、同社はシミュレーションをベースにした統合型の新・製品ポートフォリオ「シムセンター(Simcenter)」を世界で発表し、次世代製品開発の在り方に新たな道筋をつけた。
 これは、シミュレーションソフトに計算固体力学(CSM)、有限要素解析(FEA)、流体解析(CFD)をはじめとする様々なテストソリューションを組み入れることで、今後世界が目指すであろう「予測型エンジニアリング」を、バーチャル世界から可能にしていくものだ。
 同社の言葉では「製品性能に関する情報を、さらに広い全体的視野で捉え、今日の高度な製品やシステムの設計に当たって直面している膨大な課題を解決しようというソフト」などと表現されている。
 シミュレーションと各種の試験ソリューションを組み合わせたこのソフトは、拡張性に富む解析(CAE)環境を創るとともに、製品エンジニアリングの手法を一変させる力を持つと言う。下の図にあるように、デジタル試作を超える「バーチャル分析、予測技術」を通じ、デジタルツインの可能性を引き寄せる。
 視点を少し変えてこの「シムセンター」の中身をみると、まるでヨーロッパの強豪サッカーチーム(ブラジル人やドイツ人、スペイン人など多種の人材でチームが構成されている)のように、自社内外の多様な技術を集積している点に目が向く。
 可能にしたのが積極的なM&Aだ。メカトロニクス系のシミュレーション及びテスト技術で世界のリーダー企業と評されたLMS社の買収(2012年)、また数値流体力学分野の世界企業CD−adapco社の買収(2016年)と、ともに日本円で1000億円前後の大型買収を行った成果が、このソフトに組み込まれている。とくにCD−adapco社が持つ複数ソフトの最適化技術は、「次世代統合環境」を謳い文句とするシムセンターに欠かせなかったようだ。
 自社技術―かつての買収企業の技術という一面もある―との融合も最適化した。
 詳細は省くが、この新ソフト「シムセンター」は同社のハイエンドCAD「NX」のプラットフォームを基盤とし、NXが内蔵するCAE機能、また同社PLMソフトである「チームセンター」のシミュレーション機能も盛られている、といった具合だ。様々な機能を通じ、ユーザーサイドのメリットは「設計変更時間の短縮」「実施試験レス」「メカトロニックシミュレーションのオフライン化」「開発の時間とコスト削減」など、様々が予想できるという。既に自動車や家電メーカーなどで大きな導入成果が上がっているようだ。
 既存機能を集め、承継し、不具合を起さず新たなソフトとして拡張進化させる様子がシ社の取組みからダイレクトに伝わる。
 ちなみに、NXなり、チームセンターのユーザーも「シムセンター」の機能を保守サービスのなかで享受できるようにする考えだ。
 「つながり」の連鎖と進化で、製造業に新たな地平を開こうとする。