コラム

2016年11月10日号

 もう20年近く前のこと、取材ノートも残っておらず、記憶が一部不確かだが、ある経済講演会で、当時の産業界の重鎮だった某氏が工作機械業界について面白いことを言った▼およそいわく「工作機械産業は目抜き通りから横に折れた路地の奥に立つ、御殿のようだ」と。この産業人は重工業企業の元経営者。会社で、大型造船や宇宙ロケットの開発者はロマンを持って仕事していたが、「工作機械の連中はミクロンの精度をいかに再現するかなどと、会社の隅で常に黙々と格闘していた」▼彼らの業績は、メインストリートからは見えにくいが、その実、貴重な技術資源となり、会社のモノづくり全体を支えていたという。だから「まるで路地奥の御殿」というわけだ▼ただし話はそこで終わらなかった。「工作機械業界もそろそろ表通りに出て、自己出張をすべきでしょう」。同氏は講演の最後、メッセージを加えることを忘れなかった▼さて、いくらか時代を経て、路地裏の御殿と形容された工作機械産業も、今ではかなり表通りに出てきたようだ。大手のテレビCMはもう見慣れたものになり、メーカーズなどと表現されたパーソナルファブリケーション(個人製造)の時代を迎え、より多くの個人が機械に関心を持ち、評価をするようにもなった▼そして今、工作機械は「金属を加工する機械」という狭義の定義から抜け出している。ITを駆使し、またレーザーや付加製造(3Dプリンター)とつながって新しい設計・製品作りの可能性を開く。路地から表通りへ。その歩みの先端をJIMTOFで見たい。