連載

2016年11月25日号

センサー1兆個時代へ

脳に似たチップや通信技術で使いこなす

 次世代産業革命的なネットワーク技術が近年注目されている。膨大なデータを利用してリアルタイムで状況を把握し、効率的な生産や運用、故障予測につなげようとする。これを支えるのは各種センサーだ。毎年1兆個規模のセンサー活用で地球規模での社会問題を解決しようとする「Trillion Sensors Universe」構想もある(企業家のJ. Brysek氏が2012年に提唱)。トリリオン・センサーがカバーできると期待される領域は機械、医薬品、食品、物流、建築などと幅広い。計測機メーカーは「我々の各種センサーは今後ますますIoT用に各機械や製造ラインに組み込まれていくだろう。測定機そのものが流れてくるワークを判断して自動測定し、結果をネットワークにアップロードする方向にある」(東京精密の吉田均社長CEO)と話す。
 だが1兆個といえば世界人口72億の150倍、現在の世界のセンサー需要100億の100倍だ。インターネットにつながる装置の数がけた違いに増えれば、データ処理が追いつかず、また通信コスト増を招くという不安がある(総務省「平成27年版情報通信白書」によると、ネットにつながるデバイスの数は2020年までに13年の3.4倍の約530億個まで増大すると予測する)。
 そこで省電力で高速処理できるコンピュータチップの開発が進む。直感的な認識を得意とする人間の脳からヒントを得た米IBMは「郵便切手のように小さく、補聴器用電池なみのエネルギーで稼働する」54億個のトランジスターから成るCMOSチップを開発。今春にはこのチップを組み込んだスーパーコンピュータを米国立研究所(LLNL)と共同開発すると発表した。複雑処理やパターン認識を高速でこなし、ディープラーニングに結びつくという。
 一方、通信技術で課題解決しようとする動きもある。低価格、省電力で広域をカバーできる無線通信方式LPWA(Low Power Wide Area)の1つ、SIGFOXはすでに欧米を中心に24カ国で利用され、日本でも来年2月から順次、利用が広がりそうだ。ICTソリューションを提供する京セラコミュニケーションシステム(=KCCS、黒瀬善仁社長)がSIGFOXを提供する仏SIGFOX S. A.と手を組み、日本で独占展開すると11月9日に緊急発表した。
 「安価な仕組みがないとビッグデータは閉じたものになる。安さは機器が急増したときに効いてくる。これまで繋げられなかったものも繋げられるようになる」
 黒瀬社長はそう何度も低価格を強調した。それもそのはずで、通信コストは契約回線数や通信回数に応じて設定される予定だが、「たとえば1回線で年額100円、3年間で3千円といった使いきりで売れるようになるのでは」と見る。月額でも安いと思える価格だ。加えて低消費電力のため電池で5年程度運用できるため、これまで必須となっていた商用電源が必ずしも要らなくなる。SIGFOXシンガポールのロズウェル・ウルフ社長は「デバイスからシンプルなメッセージを送るのに適した方式で、デバイスの膨大な数に対応できる唯一のネットワークだと思う」と自信を見せる。KCCSはデバイスメーカーやサービス提供事業者からパートナーを募り(すでに40社が名乗りを上げている)、来年3月末までに全国主要都市へ展開する計画にある。