連載

2016年12月10日号

オープンネットが導く、スマート工場

旧機種も他社機もアプリで賢く進化を

 11月22日に閉幕した「第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)」。会期中に東京ビッグサイト会議棟で開催された第17回国際工作機械技術者会議でも11月20日のIoTに関わるテクニカルセッションは満員近い聴衆を集めた。
 ファナックFA事業本部の野田浩副事業本部長は他社機を含めた様々な設備機器をつなげる国内オープンネットワークの代表格、「FIELD system(フィールドシステム)」について講演した。
 来年発売予定の同システムに搭載するアプリ第1弾「加工時間予測」は、接続した機械の設定情報をCNCから集約してシミュレートすることにより、実際に近い精度(±5%)で加工時間を予測できる機能だ。この機能、実は既にファナック製CNC装置に搭載されているものだという。
 この加工時間予測機能が新たにフィールドシステムのアプリとして搭載されることで、ユーザーにどんなメリットがあるのか。野田副事業本部長は「機械単体ではなくフィールドシステムにつながる全機械のスケージューリングを最適化できるようになる。どの機械にどのプログラムで加工すれば最も効率が良いかをPC上で素早く検証できるようになる」という。
 開発中のフィールドシステム向けアプリとしてはこのほか、最新の描画機能を備えた対話プログラミング機能、AIを活用した主軸の故障予知機能がある。同社のロボット事業ですでに「年内に累計1万台の採用見込み」という保守・診断機能「ゼロダウンタイム」も、ロボットのみならず工作機械や周辺機器などに対応するフィールドアプリとして再開発が進んでいる。
 フィールドシステムは他社機のみならずレガシーな機械(旧機種、ファナック製CNC搭載機はその前の機種なども)もネットワークにつなげるのが大きな特徴。アプリの最新機能をレガシーな機械でも使えるようになれば生産性は確実に上がる。
 ただ、前出の加工時間予測アプリをはじめ、機械の設定情報をCNCからフィールドシステム上に集約する必要があるアプリの場合、他社製CNCにも対応出来るようにできるかは現時点では未定だ。野田副事業部長は「データセキュリティに定評あるシスコシステムとの協業が他社製CNCと連携する鍵。機械設定情報などを外に流出させず、ユーザーに使いやすい形で様々なアプリを提供していきたい」とした。
 とはいえファナックのCNC装置の世界シェアは50%以上あり、レガシーな機械を含め完全につながる対象機は膨大にある。楽観論かもしれないが、スマホのように「古い機械でも新アプリが使える」メリットが浸透すれば、対応の有無で競争力の差が広がるかもしれない。
 JIMTOF会場を見て歩く限り、工作機械メーカーの多くはまだ、それぞれのNCインターフェースを磨き込み、主軸温度や電流値、クーラント値など機械内部情報の「見える化」を始めた段階。「見える化だけでも十分カイゼンにつなげられる」との声も多かったが、果たして熟練工が急速に減る日本で、それがいつまで通用するのかは疑問がある。
 「中国工場ではきっと、ここまでの生産性向上は無理だったでしょうね」。きめ細やかな熟練工の知見を活かし、カイゼンを重ねて大幅な生産性向上を果たした某工場の工場長の声がどうも耳に残る。