連載

2017年1月25日号

AIが感情に寄り添い、ストレス軽減

運転や製造での活用が目前に

 今年1月5日から米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES」。その主役は家電やスマホから人工知能(AI)に取って代わられた。自然言語を理解し家電を操作するアマゾンのAI搭載端末「エコー」はその代表。そして、AIを搭載した自動車もまた、CESの目玉となった。
 「ノアは僕を深く理解してくれる。2人で協力して安全運転を実現できるんだ」
 トヨタ自動車が出展したAI搭載コンセプトカー「TOYOTA Concept-愛i(コンセプト・アイ)」のプレゼン。50代と見える欧米人プレゼンターは「30年先の未来から来た」という設定で、「ノア」と名付けたAIとの絆をスクリーンで見せた。
 濃霧で視界が悪く運転が困難な道を娘を乗せて走った際には、ノアはドライバーの表情を読む認識技術で運転者のストレス度を測って「自動運転に切り替えようか?」と提案。安全が確保できたことに加え、ノアは会話から父子がお腹を空かせていることを察知し、好みのレストランも案内してみせた。家族旅行では、ノアは野生動物好きの一家の好みに合わせて「20分くらい遠回りになるけどダチョウ牧場に行ってみる?」と提案したり野生馬との並走を提案し、家族を喜ばせた。
 自然な会話、感情認識や嗜好性蓄積など、人を理解するための複合技術が、コンセプト・アイに搭載されたAIの強み。こうした最新認知コンピューティング技術を備えたAIは、製造現場での活用にも期待が高い。
 昨年11月に東京ビックサイトで開催された第17回国際工作機械技術者会議。IBMワトソンIoT研究所の最高技術責任者Sky Bruce Matthews氏は、AIや認知コンピューティングの進化と採用拡大が、「膨大なプログラミングや複雑な操作にまみれたストレスフルな環境からワーカーを解放する」と講演した。
 「キーワードはビジョン、スピーチ、学習、協調。例えば、ジェスチャや脳波から人が何をしたいかをAIが認識して人と自然な会話で交流できれば、ロボットの新タスクを特別なプログラム無しに学ばせることも可能だ。IBMのAI・ワトソンにおいては保守記録やエキスパートの知見等をワトソンに集約し、ワトソンが専門家の代わりにガイド役を務める研究を進めている」(Sky氏)
 変化は目前に迫る。「物理学や医学の世界では既にワトソンの活用がかなり進んでいる。同様に、製造業でもAI採用や認知コンピューティング技術がこの2~3年で加速し、IoTやインダストリアルインターネットの劇的な技術シフトが起こるだろう」(同)。